結局、米国人は何を「決め手」に大統領を選ぶのか 選挙の相棒を「急進左派的」人物に決めた背景

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しかし、環境問題を重視し(つまりは企業に対する規制強化)、増税する姿勢は、特に製造業の白人労働者層を多く抱えるラストベルトでは不利に働く可能性があります。

下記の資料は、大統領選において共和党支持者と民主党支持者が重視する論点についてPew Research Centerが行った調査をまとめたものです。

(画像:筆者作成)

経済は共和党支持者が一番重視する論点であり、民主党支持者も3番目に重視しています。またここに記載はないですが、無党派層も経済を一番重視しています。

それに対して環境保護問題は民主党の支持者が2番目に重視、共和党の支持者は17番目に重視と、極めて低い結果になっています。アメリカ全体でみると、今は環境問題よりも経済問題が非常に重視されていると分析できます。

選挙の争点は「経済v.s.環境」に

今回の大統領選における重要な争点は「経済」か「環境」か、です。

8月頭にアメリカの株価が暴落し、経済が減速するのではないかと予測が出ています。11月の選挙に向けてさらに経済への不安が高まった際には、強い経済政策を打ち出しているトランプ氏に大きく有利になるでしょう。気候変動対策よりもまずは経済という風潮がさらに強まると予想します。

また、急進左派的政策にさらに拍車がかかるような副大統領候補を選んだという批判がさらに高まるような事実が判明し、これにハリス陣営が耐えられなければ、トランプ陣に有利になるでしょう。

ではどのような場合にハリス氏が有利になるのでしょうか?

それは明るい未来への期待、結束や団結が必要とされたときだと思います。「we are not going back」とハリス氏のポジショニングステートメントにあるように、トランプ氏の時代に戻りたくないと、未来への期待が重視される局面になればハリス陣営が勝利する可能性が強まります。

また、何か分断をあおるような事件が起こり、アメリカが結束・団結することを求められる局面でもハリス氏が有利になると思われます。

もっとも、ここで声を大にして指摘しておきたいのは、本当に目先の経済を重視して、気候変動問題への対応を置き去りにしていいのかということです。異常気象が世界中で最悪の記録を更新し、人々の生活に悪影響を及ぼしている今の世界において、経済や社会とバランスを取りながら地球環境問題に取り組み、世界を持続可能なものにしていく考え方が必要になってくるのは確実です。

だからこそ、そして今現在は経済が強く重視されているからこそ、選挙戦の行方はトランプ氏陣営に対抗できるような魅力的で現実的な経済政策を気候変動対策とともにハリス陣営が打ち出せるかがカギになってくるでしょう。

田中 道昭 立教大学ビジネススクール教授

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たなか みちあき / Michiaki Tanaka

シカゴ大学経営大学院MBA。専門は企業戦略&マーケティング戦略およびミッション・マネジメント&リーダーシップ。三菱東京UFJ銀行投資銀行部門調査役、シティバンク資産証券部トランザクター(バイスプレジデント)などを経て、現在は株式会社マージングポイント代表取締役社長。主な著書に『「ミッション」は武器になる』(NHK出版新書)、『アマゾンが描く2022年の世界』(PHPビジネス新書)、『GAFA×BATH 米中メガテック企業の競争戦略』(日本経済新聞出版社)など。

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