また、鉄道旅行の醍醐味の一つに駅弁を挙げる人も多いだろう。土地の名物が彩りよく並べられた駅弁は、目と舌で味わうことができる。しかし、ここであえてお勧めしたいのは、郊外のショッピングセンターとまではいかなくとも、スーパーで食事を調達することである。ショッピングセンターにしても、スーパーにしても、広大な駐車場があり、確かに見てくれはどこでも同じかもしれない。しかしそれは外観の問題である。店内に並べられている商品、特にお総菜などは地域の特色が出ていることが多い。かつて四国一帯で展開するスーパー「マルナカ」に行ったとき、かつおのたたきが、ただの「お総菜」として売られているのをみたことがある。駅弁が「その土地でしか食べられないもの」だとするならば、スーパーのお総菜は「その土地の人が(日常的に)食べているもの」という位置づけになるのではないだろうか。
スーパーで売っている牛乳にも旅情はある
ごくごく個人的な話をすると、私はアルコールを体が受け付けない。つまり鉄道旅行の楽しみに、「車窓を眺めながらの酒盛り」を加えることができないのである。しかし私には、各地のスーパーで「ご当地の牛乳を入手する」という楽しみがある。最近は地ビールが有名だが、牛乳の商品数はそれよりもはるかに多い。スーパーに足を運んだ数だけ新しい牛乳との出会いがある。こうして列車内では酒盛りならぬ牛乳盛りを堪能し続けている。余談であるが、東日本では岩手の「くずまき高原牛乳」が、西日本では島根の「木次牛乳」が、今のところ私のなかでの牛乳横綱である。
旅に出かけても、地元の人と同じ列車に乗り合わせても、その土地の生活を知ることは難しい。見た目がかわいかろうと、素朴だろうと、どこでも同じだろうと、そこに住む以外に生活を知るすべはないのではとすら思っている。あくまで旅行者という立場でしかない。都会の視点と願望で旅先の土地の見てくれを評価するよりも、郷に入ったら「郷に楽しめ」の精神でいたほうが発見は多いし、何より自分だけの旅情に出会える。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら