【産業天気図・ガラス/セメント】デジタルと海外が牽引、合理化も後押しする。国内低迷が課題
ガラス各社は今期、営業増益の見込み。だが活況というより、むしろ国内市場の厳しさを、それぞれの収益品や買収などの経営施策で補う格好だ。
国内建築用板ガラスの値上げを相次いで打ち出した旭硝子<5201.東証>、日本板硝子<5202.東証>、セントラル硝子<4044.東証>のガラス大手3社だが、懸念されていた通り、即効性は期待薄のようだ。各社「粘り強く取引先に訴えていく」としているものの、期初にもくろんだ下期業績の後押しは、空振りになる可能性もある。
ただ3社とも、それぞれの強みで今期(旭硝子は12月期)は営業増益の見込み。旭硝子は、液晶やプラズマ用のFPD(フラット・ディスプレー・パネル)向けガラスの好調が続いている。4~6月に大手液晶パネルメーカーが集まる台湾で生産調整の動きがあったが、世界需要拡大が勝り、足を引っ張る事態にはならなかった。夏以降は「第8世代」と呼ばれる最先端大型液晶ガラス基板の出荷が始まり、供給増に拍車が掛かる。また板ガラスは欧州が稼いでいる。価格改定の浸透や需給バランスの回復、ロシアの伸長などが貢献している。値上げが進まない国内や中国製の安価製品流入で競争激化のアジアをカバーしている形だ。FPDと欧州が牽引する状況は当面続きそう。
海外が引っ張るという点は日本板硝子も同じ。国内、アジア主体の本体は厳しいが、世界シェア3位の英国ピルキントン社を買収して一気に収益が拡大。連結営業利益は前期比4倍になる。ただ、これは今期だけの話で、来期に買収の真価が問われることになる。セントラル硝子はガラスの目減り分を医薬関連製品など収益源の化成品の上振れでカバーする。
セメント首位の太平洋セメント<5233.東証>も海外牽引が一部当てはまる。今期の国内セメント総需要は5700万トンで前期比3.4%減の見通し。つれて国内販売量は減少するが、住宅やインフラ整備需要で活況の米国販売好調で補う。加えて物流合理化やリサイクル原燃料使用増加などのコスト削減策で利益確保を図る。住友大阪セメント<5232.東証>も同様のコスト圧縮策で増益分をひねり出す。米国の住宅需要は減速感が出ており、今期は国内減を補ったとしても来期以降についても同じ役割を期待するのは難しい。ガラス会社同様に打ち出している国内セメント価格の値上げの成否が来期以降の業績を見通すうえでポイントになる。
【鶴見昌憲記者】
(株)東洋経済新報社 会社四季報速報プラス編集部
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