「日本経済最悪のシナリオ」を意識し始めた日本株 円安の追い風を自ら止め、政策は機能不全に

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昨年4月に植田和男氏が日本銀行の総裁となってからは、ゆっくりと引き締め政策を進める中で、円安が進みインフレ期待を底上げして年率2%のインフレ完遂に近づきつつある。2022年以降の大幅円安はアメリカの金利上昇がもたらした側面が大きいが、日銀の金融緩和の長期化が円安を後押しし、これらの結果、日本でも年率2%のインフレが恒常化しつつある。

だが、生活必需品を中心とした大幅な価格上昇は、実質所得の目減りをもたらし、2023年半ばから家計の消費を抑制している。家計に対する所得分配政策である減税政策などが不十分であることが家計の所得目減りを招き、先述したように2023年半ばから日本経済の成長はほぼ止まっている。

マクロ安定化政策が機能不全に陥りつつある

大幅な円安がメディアなどで消費低迷の戦犯になっているが、深刻な問題はインフレ安定と経済成長を後押しするマクロ安定化政策が、機能不全に陥りつつあることだ。

筆者の懸念が杞憂で済めばいい。だが、日銀が断続的な利上げを始める中で、仮に円高進行を促す引き締め政策を後押しする新たな政権が、2024年10月以降誕生すればどうなるか。その場合、日本株のリターンは、米国株を大きく下回り続けるだろう。

(本稿で示された内容や意見は筆者個人によるもので、所属する機関の見解を示すものではありません。当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

村上 尚己 エコノミスト

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むらかみ なおき / Naoki Murakami

アセットマネジメントOne株式会社 シニアエコノミスト。東京大学経済学部卒業。シンクタンク、外資証券、資産運用会社で国内外の経済・金融市場の分析に従事。2003年からゴールドマン・サックス証券でエコノミストとして日本経済の予測全般を担当、2008年マネックス証券 チーフエコノミスト、2014年アライアンスバーンスタン マーケットストラテジスト。2019年4月から現職。

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