最近の日銀と通貨当局の対応をみると、デフレリスクに直面している中国と同じように、日本の経済政策が機能不全となりつつあるようにみえる。
日本経済停滞への「逆戻り」を意識し始めた株式市場
その帰結は、日本経済の停滞が長期化、年率2%のインフレ安定と経済正常化に失敗する「最悪のシナリオ」であるが、このリスクが日本の株式市場で意識され始めたということだろう。
1990年代半ばから日本だけが、デフレを伴う稀にみる低成長に陥ったのは周知の事実である。これを失敗の教訓としない当局者や政治家、経済学者などの意向が優先され、マクロ安定化政策が再び緊縮方向に軸足を向けつつある兆候がみえる。この背景には、支持率低下に苦しむ岸田政権の霞が関における求心力低下が影響しているのかもしれない。
1990年代半ばからの日本で起きたデフレの長期化は、通貨価値の行きすぎた上昇(大幅な円高)を伴っていた。
経済主体のデフレ期待が支配的になれば、安全資産である円キャッシュへの需要が増えるので、為替市場においては恒常的に円高圧力が強まる。そして、デフレ期待の強まりで起きた円高が、輸出企業の価格競争力を削ぎ円ベースの海外売り上げを削減、そして経済成長を低下させる経路で一般物価に対して下落圧力が強まる。
つまり、行きすぎた円高を自ら放置することは、デフレを許容する緊縮政策であり、実際に1995年、2008~2009年の日本では、相当緊縮的な経済政策が実現したと筆者は位置付けている。つまり、デフレと通貨高の悪循環に自ら陥り、デフレと低成長を長期化させたということであり、こうした惨状が繰り返されたのが、2012年までの日本経済である。
第2次安倍政権下でアベノミクスが始動した2013年以降は、超円高が修正されデフレが和らいだ。緩やかなインフレと通貨安の好循環が2022年以降さらに強まり、2024年度の春闘ではようやく賃金上昇率が3%を上回るなど実質賃金上昇を伴う好循環が強まりつつある。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら