北朝鮮戦の逆転負けは「必然」だった セルジオ越後に聞く「日本サッカーの問題点」

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「選手の発掘」を重視するなら、五輪代表(※来年のリオ五輪出場を目指すU-22日本代表)で臨むべきだったと思います。彼らこそ、国際経験を積まなければならない世代だし、そもそも彼らは強化の場自体が少ない。でも、この世代からは遠藤航(湘南ベルマーレ)と浅野拓磨(サンフレッチェ広島)のふたりしか選ばれませんでした。

五輪代表で臨んだなら、優勝できなくても「ドンマイ」で済みますが、A代表として臨む以上、ライバルチームにも欧州組がいないわけだから、言い訳は許されない。ハリルホジッチにとっては初めての大会かもしれませんが、日本代表にとっては何度も経験している大会で、前回王者として臨むわけです。ノルマは優勝しかないですね。

協会と監督との間に緊張感が感じられない

――ノルマが設けられない理由は、なんだとお考えですか?

ノルマを設けると、それをクリアできずに監督の進退問題に発展したとき、選んだ自分たちにも責任が生じて自らの首を締めることになりかねないからじゃないですか。

シンガポールに引き分けたとき、ハリルホジッチの進退問題が議論されてもおかしくなかった。でも、責任を問う声は日本サッカー協会からもメディアからも聞こえてきませんでした。ハリルホジッチはバカンス中に思ったでしょうね。「この国では失態を犯しても誰も責任を追及してこないんだな。これはロシア・ワールドカップまで安泰だな」って。

「本来ならシンガポール戦の引き分けで監督の進退問題が出てもおかしくなかった。だが、どこからも出なかったこと自体が異常だ」とセルジオ越後氏は疑問を投げかける(撮影:今井康一)

そもそも強化というのは、明確な目標を立てて、雇う側と雇われる側の間に信頼関係だけでなく、緊張感も保ちながら、最善の策を練って進めていくものです。

振り返ってほしいのは、2002年日韓ワールドカップのフィリップ・トルシエ時代です。「地元開催のワールドカップでなんとしても決勝トーナメントに進出する」という明確な目標があり、それを実現させるために、コパ・アメリカ(南米サッカー連盟主催の大陸別選手権)やモロッコのハッサン2世国王杯に参加したり、欧州遠征を何度も行なったりしました。

その間、トルシエは何度もノルマを突きつけられ、キリンカップで結果を残せなければクビと言われたこともあった。一般紙が後任としてアーセン・ベンゲル(現英アーセナル監督)就任の可能性を報じたこともあったり、サポーターがスタジアムで「トルシエコール」を送って支持を表明したりしながら、最終的にトルシエ自身がハッサン2世国王杯やアジアカップで結果を残し、2002年までの契約延長を勝ち取ったわけです。

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