北朝鮮戦の逆転負けは「必然」だった セルジオ越後に聞く「日本サッカーの問題点」

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――先ほど話題にあがった五輪代表、U-22日本代表についてはどうでしょうか。リオ五輪のアジア最終予選は、来年1月に迫っています(カタールで開催)。

五輪代表も同じです。現状では手倉森誠監督や選手たちが漠然と「メダルを獲りたい」と言っているだけで、それにふさわしい強化ができているとは思えません。

7月1日に仙台でU-22コスタリカ代表と対戦しましたが、それ以降、12月に中東で直前合宿を組むまで強化マッチを行なう予定もないんです。本気でメダル獲得を目指すなら、毎月のようにテストマッチや海外遠征をすべきだと思いませんか。

2012年のロンドン五輪で男子サッカーは4位になりました。メダル獲得にあと一歩届かなかったのだから、それ以上の強化をしなければならないのに、テストマッチの数は明らかに減っています。なぜ、テストマッチを行なわないのか。スター選手がいないこの年代では、A代表のように興行としての旨味がないからですか。

振り返れば、昨年9月の仁川アジア大会でも、Jリーグとの兼ね合いでベストメンバーを招集することができなかった(※Jリーグ開催期間中だったため、原則、各チームからひとりという招集制限があった)。これがメダルを獲得するための本気の強化とは、とてもじゃないけど、思えません。

勝ったら儲けもの。負けても「育成を考えれば有意義な経験だった」なんて言っているうちは世界では勝てません。それに22、23歳の選手に対して「育成のため」なんて言うのは日本ぐらいものだし、本気で勝ちに行くからこそ負けても成長するわけで、おざなりの強化しかしていなければ、その負けの中には成長はありません。

責任とノルマがないまま、また同じ4年を過ごすのか

そもそもA代表の監督をザッケローニ、アギーレ、ハリルホジッチといった外国人監督に任せているのは、日本人監督ではまだワールドカップには勝てない、というのが理由でしたよね。では、なぜ、五輪代表は日本人監督が率いているのか。五輪は日本人監督でも勝てると思っているということですか。矛盾だらけですよ。

もっとも、2020年の東京五輪では、日韓ワールドカップのときのように、猛烈な強化に乗り出すでしょうね。地元開催で惨敗すれば、メンツが立たないですから。

僕が残念なのは、本気になればできるのに、やらないことなんです。誰かが先頭に立ち、責任を背負ってJリーグというプロリーグを創設し、日韓ワールドカップも成功させた。それなのに今は、誰も責任を取らず、厳しくノルマも設けず、また同じような4年間を過ごそうとしている。だから、毎回同じような失敗を繰り返してしまうんです。(文中一部敬称略)

飯尾 篤史 スポーツライター

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いいお あつし / Atsushi Iio

東京都出身。明治大学卒業後、サッカー専門誌の編集記者を経て2012年からフリーランスに転身、スポーツライターとして活躍中。『Number』『サッカーダイジェスト』『サッカーマガジン』などの各誌に執筆。著書に『残心 Jリーガー中村憲剛の挑戦と挫折の1700日』(講談社)、構成に岡崎慎司『未到 奇跡の一年』(ベスト新書)などがある。

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