東日本大震災から7カ月の石巻市、町の再建が最大の課題に

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東日本大震災から7カ月の石巻市、町の再建が最大の課題に

東日本大震災の発生から7カ月が経過した被災地--。宮城県石巻市は仮設住宅や借り上げ住宅への入居が進んだことで、10月11日までにすべての避難所を閉鎖した。ただ、住民生活の再建にメドが立ったわけではない。現在、大きな問題になっているのが、津波で浸水した地域における住宅や店舗の再建だ。

石巻市大門町3丁目に住んでいた千葉眞良・石巻市議会議員(58)の平屋建て自宅には屋根まで津波が押し寄せ、建物が全壊した。千葉さんはその後、民間アパートを見つけて移り住んだが、元の自宅に戻る見通しは立っていない。

震災から約1カ月後の4月8日、石巻市は大門町3丁目を含む被害が大きかった地域を、新たな建物の建築を禁止する「建築制限区域」に指定した。その後、建築制限区域は9月12日付けで「被災市街地復興推進区域」に変更されたが、2013年3月10日まで引き続き規制の網がかけられることになった。

復興推進地域では、住居や事業用の建物で2階以下、敷地面積が300平方メートル以下などの要件を満たす場合に、県知事の許可を受けることで建物の新築や増改築は可能だ。ただ、同地域では今後、土地区画整理事業や市街地再開発事業など権利関係の変更を伴う事業が予定されているため、住宅を新たに建てても無駄になる可能性がある。加えて、今後の津波被害を防ぐための道路や住宅地の盛り土など、大規模な土木工事も必要になる。



■津波被害を受けて住む人がいなくなった住宅(石巻市大門町)


■どの家も一階が浸水した(石巻市大門町)

千葉さんによれば、震災前に大門町3丁目に住んでいた約250世帯のうち、4~5世帯が現在も浸水した自宅の2階で生活している。その一方で、ほとんどの住民は市内各地の仮設住宅や借り上げ住宅などに散り散りの形で移っていった。
 
 大門町では地盤沈下が70センチメートル以上に達したことから住民の不安感は強く、「代替地を用意してほしい」との声が上がっている。ただ、「石巻市内で新たな居住用地を確保することは難しく、全壊地域の大門町でも居住空間を作らざるを得ないのが実情だ」(千葉さん)。

千葉さんは町内会の副会長も務めている。現在、町内会は月1回の割合で開催している。ただ、「連絡がつかない人も多い。国の第3次補正予算が決まらなければ、物事が進まない。現段階では、土地利用計画も絵に描いた餅に過ぎない。町内会として会合を開いているものの、情報交換のレベルにとどまっている」と千葉さんは語る。

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