「肉の切り方」は"焼き肉の常識"を変えるか 経営しているのは、あの老舗演芸ホール

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「いろいろな肉を少しずつ楽しめるのがやはり人気の理由です。焼き方が難しいものはスタッフが調理しますし、雰囲気を味わいながらゆっくり食事ができるので、女性のお客様にも好評です」(坂井さん)。

アミの上で肉が焼けるが早いか、我先にと口に放り込んでいく…というようなガツガツした食べ方ではない。自ずと居住まいを正してしまうような、優雅な提供スタイルをとっているようだ。

運営しているのは「明治座」

日本橋本店の坂井店長

実は同店は、明治座フードコミュニティー、つまり「明治座」のグループ企業が経営しており、明治座の三田芳裕代表取締役が、同社の社長も兼ねている。明治座と言えば、創業1873年の歴史ある演芸ホールだ。

であれば、この格調の高さは頷ける。また、本店は日本橋の商業ビル「コレド」向かいという立地に合わせ、料亭のような外観や内装で、落ち着いた雰囲気を醸し出している。平日の客入りは平均60〜70名だが、近辺の大手企業による接待利用がかなりのところを占め、常に予約が埋まっている状態だそうだ。

ただ、1号店である数寄屋橋店(中央区銀座)や、7月15日にオープンしたばかりの人形町店(中央区人形町)は、もう少しカジュアルさを演出しているようだ。客単価も、日本橋本店の8000〜1万円に対し、数寄屋橋店は6500〜8000円ほどという。もっとも、数寄屋橋店では2時間ほどの時間制限を設けている。

「肉の切り方」第1号店ができたのは震災の年である2011年。もとあった焼肉店の外国人経営者が帰国して空いた店舗を居抜きで買い取ったのが明治座フードコミュニティーだった。

もともとは「観劇のお客様に食事を楽しんでもらう」ために、明治座の所在地である浜町(中央区日本橋)近辺に居酒屋や食事どころをつくったのが、明治座フードコミュニティーの始まりという。同社の展開する店舗を見ても、居酒屋や蕎麦、とんかつなどだ。従来の業態と大きく違う焼肉店は、同社にとっても挑戦となったのではないだろうか。さぞや、事前の勉強や研修を重ねたのでは…と聞いてみると、「実は、スタッフのなかにたまたま、焼き肉の経験者がいたのです。肉の切り分け方もすべて、その従業員のノウハウです」(坂井さん)と、意外にも偶然だったらしい。

店舗を買い取ってすぐに準備を進め、2011年9月にオープン。「切り方にこだわる」という、それまでにないコンセプトは珍しがられたものの、なかなか客に浸透しなかった。

転機が訪れたのは、2012年の6月だったという。

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