電電公社時代からの構造が続く
携帯電話における通信業者と機器製造者の関係は、固定電話の時代の構造を引き継いだものといえる。かつて日本の電気通信網は、電電公社によって独占されていた。電話機や交換機は、NEC、沖電気工業、富士通などの「ファミリー企業」が製造していた。電電公社が決める仕様に従い、要求される性能の機械を製造するという意味では、実態は電電公社の下請けであった。
1985年に公衆電気通信法が電気通信事業法に改正され、公社の民営化、電気通信事業への新規参入、そして電話機や回線利用制度の自由化が認められた。しかし、携帯電話に関しては、基本的には同じ構造が続いていることになる。
建設業の場合、元請負者が工事を発注者から一式で請け負い、下請けや孫請けに仕事を回す構造がある。IT業界の構造もこれと同じだとして、「ITゼネコン」という言葉が使われることさえある。
携帯電話とスマートフォンとの違いは、垂直分業と水平分業の違いだといってもよい。日本の携帯電話の場合は、NTTドコモを頂点とする垂直統合体制が築かれているのに対して、スマートフォンは本来は水平分業を要求する製品である。少なくともアプリの供給においては、右で述べたようにそうなっている。
日本の携帯電話は「ガラパゴス携帯」と呼ばれる。規格が日本固有であり、国際的に孤立化しているため、世界の潮流から取り残されて、独自の発展を遂げたからだ。そうなった原因として、囲い込みがあることを前回述べた。
スマートフォンはもともと囲い込みとは異質の文化をベースとする製品なのである。ITそのものが、そうである。