一方、「スイカ」などICカード乗車券は、ほかのプリペイド式ICカード型電子マネーと同じく、資金決済法の適用対象とされています。背景には、この前身である「前払式証票規制法」による規制に関して寄せられた意見と、これに対する金融庁のやり取りがあるようです。
ICカード型電子マネーを発行する際には、利用者保護のために、一定の基準日における未使用残高の2分の1以上に相当する発行保証金を供託しなければなりません。この金額算出方法に関し事業者側から「カード未使用残高のうち前年度の乗車券使用実績を除いた物販部分のみの金額を基準にして計算する扱いにせよ」という意見が寄せられました。
金融庁の回答とは
これに対して金融庁は、ICカード乗車券であっても使用期間は長期に渡ることや、カード発行者の倒産など発行保証金から利用者に配当を行う必要が生じた際、未使用残高のうち物販相当分に応じた配当をするのは困難である、との回答をしました。
従来の乗車券に比べてICカード乗車券の使用期間は、比較的長期にわたります。ほかのプリペイド式ICカード型電子マネーが資金決済法の適用を受ける以上、ICカード乗車券も別異に解釈する必要はありません。また、ICカード乗車券は、鉄道輸送サービスだけでなく、さまざまな商業的サービスで使える電子マネー的側面が発達しており、もはや乗車券として分類するのは適切でないのかもしれません。
私が幼少のころ、乗車券といえば切符しかなく、1977年に実施された国鉄のキャンペーンでは「一枚のキップから」というキャッチフレーズもありました。
旅行前に準備した切符はこれから始まる旅への期待を誘い、手元に残った切符には旅の思い出が残りました。収集の対象にもなり、私もかつては小遣いすべてを収集に投入した時期がありました。
鉄道輸送のみならずさまざまなサービスを受けられるICカード乗車券はこの上なく便利。ですが、切符が持つ魔力、醸し出す色気、昔に戻ることができる足跡が失われていくのは、鉄道趣味人として一抹の寂しさを禁じ得ません。
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