「スイカ」は、法律の上では乗車券じゃない? 切符と同じと思ったら大間違い!

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ところで、鉄道事業者が発行していた磁気式プリペイドカードは、資金決済法による規制の対象となる「前払式支払手段」に当たります(法第3条)。一般社団法人日本資金決済業協会のホームページを見ると、「前払式支払手段」に当たるかどうかは、

①金額・物品・サービスの数量が、電子機器や証票などに記載・電磁的な方法で記録されている、②証票などに記録されている金額・物品・サービスの数量に応ずる対価が支払われている、③金額・物品・サービスの数量が記録されている証票や、財産的価値と結びついた番号や記号などの符号が発行されている、④物品を購入・サービス提供を受ける際に、証票などの番号など符号が、提示、交付、通知などにより使用できる――という4つの要件に該当することが必要とされています。

乗車券はなぜ「資金決済法」から除外されるのか

磁気式プリペイドカードは、発行されたカードに金額が印字され、電磁的な方法で記録されています(①③)。そして、カードに記載あるいは、電磁的な方法で記録されている金額に応じた対価が利用者から支払われています(②)。鉄道による輸送サービスを受けるときには当然カードを使用して券売機で乗車券を購入したり、カードを利用して改札機を通過したりすることになります(④)。そのため「前払式支払手段」に該当することになります。

しかし、磁気式プリペイドカードだけでなく、乗車前に運賃を前払いするのと引き換えに発行される従来の乗車券についても、上記の①~④のいずれにも該当し、資金決済法でいう「前払式支払手段」に該当するようにも思えます。乗車券が「前払式支払手段」に該当するとなると、利用者保護のために発行者は「発行保証金」の供託が必要になったり、金融庁の監督を受けることになったりすることから、この該当性については大きな問題になりえます。

この点、乗車券に関しては、資金決済法第4条第1号に適用除外があり、乗車券は「前払式支払手段」であっても、資金決済法は適用されないと規定されています。

なぜ、適用されないのでしょうか。それは資金決済法が「消費者保護」を目的としていることが理由にあげられます。つまり、消費者がサービスを受けられるように保護する、受けられない場合は資金を保護することになっています。しかし、乗車券は購入から使用までの期間が短期間であり購入者を保護する必要性が低いほか、サービス提供者の便宜上発行されるもので「前払式支払手段」による与信がないため、発行者への厳しい規制が合理的でないと考えられているわけです。

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