多良さんの飾らないありのままの日常生活は50〜60代の女性を中心に多くの人の心をつかみ、開設2カ月後にチャンネル登録者が1万人を超えた。その後も配信のたびに登録者が増え続け、「部屋紹介」の動画は現在までに260万回を再生している。
さらに2022年には多良さんの一人暮らしの日常をつづったエッセイ本『87歳、古い団地で愉しむ ひとりの暮らし』が出版され、「理想の老後」として多くの人の共感を呼んだ。
57年前、この団地に暮らし始めたときは3人の子どもと夫婦の5人暮らし。やがて子どもたちは成長して順番に家を出ていき、夫婦の2人暮らしを20年間。そして大動脈瘤で倒れた夫を9年ほど前にこの団地で看取り、一人暮らしになった。
「子どもが巣立っていくたびに、私の気持ちは『子育てが終わってバンザ~イ』。主人が亡くなったときも、できることはやりきった安堵感と安らかな最期に『バンザ~イ!』」と多良さんは朗らかに笑う。
8人きょうだいに両親、祖母の大家族で育った子ども時代から一人暮らしへの憧れが強かった。18歳で就職してから結婚するまで、一人の生活を謳歌した。
妻、母の役割を悔いなく卒業して、50数年ぶりに始まった3DKの一人暮らし。まず、自分のモノ以外は夫の遺品もさっぱりきっぱり処分した。
「やっぱり風通しをよくして暮らさないとね。床に置くものが少ないとお掃除もしやすいです」
何冊もあった家族のアルバムも、写真を厳選して残りは処分。何度も何度も写真を見返して、捨てられない写真だけアルバムから丁寧にはがし、最終的に靴箱ひと箱分の写真だけ手元に残した。子どもや孫たちの成長の過程がわかる写真や、夢中で子育てをしていた若き日の自分の写真。
「見るとなつかしさでいっぱいになりますね。ここまで来たんだなあと思います」
iPad歴は10年目
思い出を整理する一方で、多良さんが新しく手に入れたのはIT機器だった。まずYouTubeを始めるきっかけになったスマートテレビ。これでTVを見るようにインターネットに接続できるようになり、動画コンテンツも楽しめる。
長男に音声入力の設定をしてもらったので、さまざまな操作もリモコンに話しかけるだけでいい。テレビ録画も簡単にできるので、昔から好きだったキャサリン・ヘプバーン主演の古い映画を録画してよく観ているという。
タブレット端末のiPad歴は10年目に突入し、現在使っているものは2台目だという。風景や草花、時には家族の写真を撮り、麻雀ゲームにもハマっている。最近は毎日、次男親子とリモート夕食をしているとか。
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