社会的共通資本としての大学はどうあるべきか 藤井輝夫・総長が描く「未来の東京大学」とは

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堀内:今のお話をうかがっていると、私のイメージしている大学改革の方向にとても合っていると感じるのですが、そうすると結局、社会とどう関わっていくかというのが、企業にせよ大学にせよ、存在意義の大きな部分だとすると、その組織をどのように回すかというのはすごく重要だと思うんですね。

企業経営でよくありがちなのは、たとえば創業経営者が技術系の人で、技術にしか興味がない。もしくはセールス系の人で、セールスにしか興味がない。そういう会社はだいたい財務や人事や総務をおざなりにして、組織を回すということを真剣に考えないんです。自分が今までこれで成功してきたから、みんなも同じようにやれば会社は大きくなるだろうという感じですね。そういう経営者が創業系の人にはすごく多い(笑)。

それとパラレルに日本の大学、たとえば東大を見ると、大学における研究や学問が先ほどの企業における技術や営業だとすると、その組織を支える人事、総務、財務といったバランスシートの右側ですが、それにあまり力を入れてないなと感じています。それをまさに藤井総長は力を入れられようとしているのではないかと思うのですが。

たとえば先日、ある研究会に参加したあとに、そのメンバーで食事をご一緒したのですが、東大の研究所の所長さんがお二人いらっしゃいました。お話をうかがうと、研究どころではなくて事務作業が大変すぎると。そういうことは大学の事務局に任せることで組織を回せないのかなと思うのですが。

大学の運営経費をどう増やしていくか

藤井:これには理由があります。2004年に国立大学が法人化されてからの20年間で、たとえば東京大学全体のアクティビティは、年平均で約2%、右肩上がりでずっと大きくなっています。ただ、国から来る基盤的経費である運営費交付金自体は、むしろ減っています。

組織としての基礎体力の部分を、いわゆる競争的経費でカバーすることは相当難しく、基盤的経費で支えざるを得ませんが、その基盤的経費は増えていません。そのため、大学の経営モデルを従来の補助金型から、大学独自基金を活用するいわゆるエンダウメント型に転換して、恒常的に必要な経費を自立的に得ようという改革も進めています。このように経営の基盤部分を固めていかないと、職員組織を安定的に拡大していくことはできません。

大学全体としてのアクティビティや大学に求められる役割は増えているけれども、それを担う資金は減っている。その中で職員の皆さんや先生方がなんとか頑張って支えてくださっているのが現状です。

堀内:なるほど。わかりました。ですから、企業経営的に考えると、やはり何か欠落している部分がすごく多いということですね。

藤井:そうです。エクイティは変わらないけれど、活動スケールだけは大きく成長している状態です。

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