自衛隊は、やはり「隊員の命」を軽視している 戦闘を想定した準備はできていない<上>

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筆者はフリーランスのジャーナリストであるが、外国のメディアの日本代表を務めている。このため外務省のプレスパスを有し、FPIJ(在日外国報道協会)に加盟しているので、防衛省の記者会見に出席できる。もしこれが記者会見に出られないフリーランスのジャーナリストで大臣や陸幕長に直接質問できない立場であれば、黙殺されたままだったのではないだろうか。陸幕広報の対応に関してはあれこれ言いたいことは山ほどあるが、本稿の主題から離れることになるので割愛したい。

さて、今回の取材では菊池勇一衛生計画Gp長、井内裕雅薬務班長、川井雅文研究管理係長、渡辺孝雄3佐(薬務担当)に対応していただいた。筆者のこれまでの記事に対するオブジェクションもあったが、全体的に以前の回答から微妙に違う説明が気になった。

筆者は「個人携行救急品」は国内用と国外用があり、国外用(PKO)用が8品目に対して、国内用はポーチを含めてわずか3品目、ポーチを除けば包帯と止血帯のみの国内用キットでは不十分ではないかと書いたが、これに対して中谷防衛相や岩田陸幕長、陸幕広報室は「有事の際には国内用キットに5品目を追加し、PKO用と同等にする」「個人の救急処置に関する訓練は、陸上自衛官全隊員に対し、年間30時間から50時間程度の教育訓練を実施しており、この中で、有事の際に追加される5品目を含めた『個人携行救急品』の概要教育、実技訓練等を行っている」としている。

また「個人携行救急品」は「米軍等の装備も参考に定めており、米陸軍の同装備と概ね同様の内容品であり、著しく劣っているとの指摘には当たらないと認識している」と述べている。この反論を検証してみたい。

国内有事の際、本当に5品目を足すのか

まず筆者が2年前に当時の君塚栄治陸幕長(当時)に「個人携行救急品」について質問した際に、「有事に際しては国内用に5品目を加えて、海外用と同じ構成内容にする」といった説明は全くなかった。国外用と国内用の違いの理由を問うた筆者に対する陸幕広報室の回答は以下のとおりだった。

「(国内用は)国内における隊員負傷後、野戦病院などに後送されるまでに必要な応急処置を、医学的知識がなく、判断力や体力が低下した負傷者自らが実施することを踏まえ、救命上、絶対不可欠なものに限定して選定した。国外用は、国内に比し、後送する病院や医療レベルも不十分である可能性が高いため、各種負傷に際し、自らが処置できるための品目を、国内入れ組に追加して選定した」

これを読む限り、国内での事態に対しては国内用キットを使うとしか理解できない。今回、この件に関して衛生部に尋ねたが、明快な回答は得られなかった。

そもそも救命を第一に考えるのであれば、「医学的知識がない」場合には教育をすればよい。「判断力や体力が低下した負傷者自らが実施することが困難」であれば、負傷していない隊員による隊員相互の救護を徹底させればよい。現実にこうした努力を徹底することで米軍は「防ぎえた死」を9%以下にまで減少させることに成功しているのだ。

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