実は日本が世界3位「アルピーヌ」したたかな策 小規模ブランドがF1やル・マンに参戦するワケ

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「レース活動をするために市販車を売って儲ける」と公言したのはフェラーリの創始者、エンツォ・フェラーリだが、アルピーヌの目的はなんであろうか。

「アルピーヌはなぜレースに参戦するのか?」と筆者がフィリップ・クリーフCEOに質問すると、その答えは明確だった。

「知名度を高めるため」だというのだ。そして「我々アルピーヌの知名度は、まだ高くない」と続けた。

後述するニューモデル「A290」の発表を行うクリーフCEO(筆者撮影)
後述するニューモデル「A290」の発表を行うクリーフCEO(筆者撮影)

「1車種だけ」からの製品戦略

明確である一方で、疑問も生じる。現時点での市販車は、A110の1車種のみだ。極めて小規模なブランドに「そこまで知名度は必要なのか?」と。

実は、そのヒントは1年前に出されていた。アルピーヌが発表した将来の商品計画で、2030年までになんと7車種ものモデルを市販することを明らかにしたのだ。

そこには、A110のようにルノーと車体を共用しないモデルもあるし、それと並行してルノー・スポール時代のR.S.のような、ルノー車をベースに高性能化したスポーツモデルも含まれる。アルピーヌは今後、規模を大きく広げる予定なのである。

「A290」はアルピーヌ拡大の布石となる新生アルピーヌの第2弾であり、初のEVモデルである(筆者撮影)
「A290」はアルピーヌ拡大の布石となる新生アルピーヌの第2弾であり、初のEVモデルである(筆者撮影)

そういった視点に立てば、「知名度が足りていない」というCEOの説明も理解できる。1車種のみだったアルピーヌが7車種を手掛けることになれば、単純に考えても7倍の人にアルピーヌを知ってもらい、アルピーヌの車両のオーナーになってもらう必要があるのだから。

つまり、世界最高峰レースへの挑戦は、年間販売台数が5000台にも満たない「ニッチなスポーツカー1車種のため」と考えると計算が合わない。しかし、これから大幅な規模拡大を狙うブランドの認知度アップを狙っていると考えれば、合点がいくのだ。

そんなアルピーヌは、今年のル・マン24時間レース開催中に、その舞台となるサルト・サーキットで新車を発表した。A110に続く新生アルピーヌの2車種目、「A290」である。

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