それでも、ストレスに基づく加齢という概念は馴染みのないものではないはずだ。
私たちの誰もが、就任前と退任後のアメリカの大統領の写真を目にしたことがあるだろう。若々しい姿でホワイトハウスに入ったものの、4年後あるいは8年後にそこを去るときには、皺(しわ)が増え、髪には白いものがたっぷり交じっている。
機械学習を使った科学的な精査
だが、マーク・ボーグシュルトが率いる研究者たちは、私たちが気づくように思えるその作用が科学的な精査に耐えるかどうかを、体系的に調べてみたかった。
彼らは確認手段として機械学習を使った。利用したコンピューターコードは複雑だったが、発想は単純だ。
25万人分の顔写真をコンピューターに読み込ませ、人間の加齢の身体的指標の識別を「学習」できるようにした。皺、白髪、耳毛……。時とともにコンピューターのモデルが洗練され、歳を重ねるにつれて現れる微妙な変化を――人間の目では見分けがつかないかもしれないような違いさえ――見つけるのが、しだいにうまくなった。
それからボーグシュルトらは、企業のアルファとして在職している間のさまざまな時期のCEOの写真を、そのモデルに解析させた。
モデルが結果を吐き出したとき、その判断は明確で、真にストレスに満ちた時期を経ると私たちは加齢が速まるように見える、というものだった。
2008〜2009年の大不況に凄(すさ)まじい打撃を受けた企業を経営していたCEOたちは、そのようなストレスに満ちた衝撃的な期間に企業を経営していなかったCEOたちよりも、その後の10年間にまる1年分速く加齢したかに見えた。
高価な皺取りクリームのことなど忘れて、代わりに、高い地位と小さい裁量権につき物のストレスをさっさと取り除くべきだ。
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