法が制定されてから権力の座で多くの時間を過ごしたCEOは、もっとストレスが多かった時期に権力の座にあったCEOよりも長生きした。
ボーグシュルトらが書いているように、「私たちのサンプルの典型的なCEOにとって、企業買収防止法[によるストレスの軽減]を経験した効果は、そのCEOを2歳若返らせるのにほぼ等しかった」。
もちろん、すべてのCEOの仕事が同じだけのストレスに満ちているわけではない。より厳密に言えば、すべてのCEOが自分の仕事を「ストレスに満ちた」ものと言うかもしれないものの、CEOのうちにはより大きな生物学的ストレスに直面する可能性の高い人もいる、ということだ。
最高権力者になると早死にする
たとえば、壊滅的なパンデミックのときにデルタ航空やブリティッシュ・エアウェイズで権力の座にあるほうが、ウェブカメラや自宅用の運動器具を売る企業のCEOでいるよりも、おそらく有害なストレスを多く受けるだろう。
ボーグシュルトらはそのような前提に基づき、業界全体が大きな危機を経験している企業を支配していたCEOと、そうでないCEOを比べた。
すると果たして、業界が悲惨な目に遭っている期間に企業を経営していたCEOのほうが、そうでないCEOよりも早く亡くなっていた。
『ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル』誌に発表された調査でも同様の結果が見られた。数世紀という期間で17カ国を対象としたその調査では、選挙に勝って公職に就いた政治家は、次点で敗れて公職に就かなかった人よりも早く亡くなったことがわかった。政治的な争いの中で職務に就くことから来るストレスの重荷が、政治家の寿命を縮めるらしい。
というわけで、一部の証拠は、最高権力者になると早死にすることを示している。だが、生きている間はどうなのか? とりわけストレスの多い時期に直面したCEOは、そうでないCEOよりも加齢が速いように見えるだろうか?
この加齢は、DNA時計を使って測定した加齢とは別個のものだ。私たちのゲノムの中の化学的指標ではなく外見に焦点を当てているからだ。
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