健康を左右するのは「地位」よりも「裁量」だった ストレスとはプレッシャーだけの問題ではない

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それに加えて、公務員の給料の幅は民間部門の給料の幅よりも狭いので、お金はそれほど大きな要因にはならなかった。彼らは参加者を、最初は1985年に、その後は2〜5年ごとに調査した。

マーモットがデータを調べると、大まかではあるが明確な関係が見つかった。階級制の上位ほど、死亡率が低かったのだ。マーモットはこれを、「ステータス症候群」と呼んでいる。

最も低い階層にいて、そこにとどまっていた人は、より高い権力階層に上った人と比べて、死亡率が3倍だった。これは一見すると不可解だ。ストレスの大きい仕事と健康状態の間にあると思われる関係に反するからだ。

「みんな、言いました。『そうか、ストレスが重要であるはずがない』と」とマーモットは私に言った。

「上の階級のほうが下の階級よりも多くのストレスにさらされているのは間違いないはずです――なにしろ、いくつも締め切りを抱えていますし、大臣たちからはひっきりなしに指示がありますから。だから、私は考えました。『たしかに、高い地位の人は、より多くのストレスにさらされている』と」。

プレッシャーだけの問題ではない

だが、階級よりも裁量権――職場で物事の成り行きを決める能力――に的を絞った質問に目を向けはじめたマーモットの頭に、閃(ひらめ)くものがあった。

「プレッシャーだけの問題ではないことに気づきました」とマーモットは言った。「厳しい要求と少ない裁量権の組み合わせが問題なのです。そして納得がいきました。それでデータに表れたもののすべてに説明がつきました」

マーモットと彼の研究者チームがデータを細かく分析すればするほど、この関係がはっきりした。

仕事で途方もないプレッシャー(マーモットは「要求」という言葉を使った)に直面している人は、自分には大きな裁量権があると感じているかぎり大丈夫だった。

ところが、多くのプレッシャーにさらされていると感じ、しかも、自分が運転席に座っている(あるいは、少なくともときどきはハンドルを切ることができる)と感じていない人は、健康状態が段違いに悪かった。

私たちは独裁者である必要はないが、自分の職業人生における決定は自ら下せると感じている必要があるのだ。

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