アップル決算に透ける「iPhone帝国の急所」 「好調」と主張するが実態とはかい離

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確かに発売直後のApple Watchは好調な売り上げを示した。調査会社からは様々な調査結果が発表されているが、たとえば米Market Watchによると販売初期は米国だけで1日20万本前後が売れていたという。

発売直後の熱狂が冷めれば、販売が急減するのはデジタル製品の共通した傾向だが、Apple Watchは6月中旬までコンスタントに米国で毎日2万本を販売していた。過去の受注残処理などもあったはずだ。多少の違いこそあれ、1日あたり2万本という数字はおおむねどの調査会社も同じだ。ところがこの数字は6月下旬からは急減している。グローバルでの販売数は200万本を少し越える程度とみる予測が多い。

影響が出るのは7月以降か

アップルは6月の月間売り上げは落ちていないと反論しているが、影響が出るとするなら7月以降であろう。いずれにしろ、アップルは時計部門単体の数字を今後も控えるだろう。前年同期比で59%も成長したiPhone事業の313億6800万ドルという売り上げに比べれば、Apple Watchがアップルの業績に与える直接のインパクトは(プラスにしても、マイナスにしても)まだ小さいことも、その理由だ。

筆者はApple Watchの役割について、発売直後のコラムで「短期的な売上げや利益貢献が目的ではなく、iPhoneという大きな事業の”幹”をさらに太く、強いものにするための商品」と指摘した。

Apple Watchがアップルに与える影響という視点では、売り上げ以外にも重要なものがある。ブランドイメージへの寄与、ファッション分野との接点増加、それにiPhone自身の魅力をさらに高めることによるiPhoneエコシステムの強化といった点だ。むしろ、こちらの方がインパクトは大きい。アップルはしばらくの間、Apple Watch単独の業績に関しての説明を避けながら、(時計としての)ブランド訴求をしつつ、製品を熟成していくことになるだろう。

一方でiPadの不調は深刻な状況だ。前年同期に1330万台が売れていたiPadは、1090万台まで売り上げ台数が下降した。大型ディスプレイモデルを追加したiPhone事業がこの需要を吸収しているという見方もできるが、そのiPhone事業も利益は増加したものの、目標値を約200万台下回っている。

これが”iPhone”という太い幹をさらに太くするアップルの戦略が、いよいよ限界に近付いてきたことを象徴するのだとしたら、新たな一手が求められることになる。

本田 雅一 ITジャーナリスト

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ほんだ まさかず / Masakazu Honda

IT、モバイル、オーディオ&ビジュアル、コンテンツビジネス、ネットワークサービス、インターネットカルチャー。テクノロジーとインターネットで結ばれたデジタルライフスタイル、および関連する技術や企業、市場動向について、知識欲の湧く分野全般をカバーするコラムニスト。Impress Watchがサービスインした電子雑誌『MAGon』を通じ、「本田雅一のモバイル通信リターンズ」を創刊。著書に『iCloudとクラウドメディアの夜明け』(ソフトバンク)、『これからスマートフォンが起こすこと。』(東洋経済新報社)。

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