特有の時間スケールで地球は刻々変動する--『地球の中心で何が起こっているのか』を書いた巽好幸氏(海洋研究開発機構地球内部ダイナミクス領域プログラムディレクター)に聞く
東日本大震災で、日本列島は一瞬にして5メートルも東へ移動した。なぜ大地は動き、火山は噴火するのか。地質学の第一人者である著者は「地球は変動するのが当たり前」と言う。
──日本の屋根と称される日本アルプスは、年間4ミリメートルの隆起を続けているそうですね。
世界の屋根、ヒマラヤ山脈とほぼ同じスピード。100万年もすれば、日本アルプスの高さは7000メートルに達する。今では海抜8000メートルのエベレストの頂上からは、海の中にいた生物の化石が見つかる。地震や火山噴火で驚かされるのは、普段の変化がゆっくりだからだ。しかし、誕生後46億年という地球の時間スケールで見ると、速い動きをしているともいえる。人はその上でいつも生きている。
──なぜその変動が起きているのですか。
変動のエネルギーの根源は地球の中心部にある。地下3000~6000キロメートルにある「核」は、5000~6000℃もの高温だが、地表の気温は平均15℃しかない。地球は、このすさまじい温度差を解消しようとして、表層部と核の間の「マントル」内で絶えず物質を回し、マグマを作って、熱を地表に運んでいる。その結果、大陸を支えるプレートが動き、その沈み込み帯(継ぎ目)で火山が形成され、地震が起き、温泉もできる。すべての原因はその温度差にある。特に日本では変動がダイナミックに起こっている。
──地球は「ゆで卵構造」だとか。
地球だけではなくて、地球型惑星といわれる火星、水星、金星、みな同じゆで卵の構造だ。大気以外、中の構造は似通っている。表層部を地球では地殻といい、英語ではパンの堅い皮を意味するクラストと表現する。火星なら「火殻」となるのか。卵の白身のところがマントルと呼ばれ、黄身のところを核という。ゆで卵は固ゆでするとすべて固体だが、地球の核は二つに分かれていて外側の部分は液体と考えられている。