円安がこんなに続くのは「日本経済が縮んだ」から 貿易収支が改善したのは「悪いJカーブ効果」

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6月21日に閣議決定された「骨太の方針」の最大の問題は、貿易赤字などの構造的な円安要因への対応策が議論されなかったことだと、筆者は捉えている。

円安をテコに企業の国内回帰を促す姿勢を示し、姿勢だけでも円安を是正したいという態度を示すことで、足元の円売り圧力を弱めることができたのではないか。

むろん、人口減少社会で国内需要の減少と人手不足による供給能力の減少が同時に進むことが予想される日本に生産設備を回帰させることが賢明なのかという観点からは、政府が呼び掛けたところでそれほど国内回帰が進まない可能性もある。

しかし、今後の予想で動く金融市場に対しては「見せ方」も重要である。

国内の設備投資は増えていない

国内回帰が進めば、円安をテコに輸出を増加させることができる。その結果、通常の「Jカーブ効果」によって貿易赤字が減少(貿易黒字が増加)していくことが期待される。輸出企業が外貨売り・円買いを行うことで、円安圧力が弱まってくる(スタビライザー効果)。

この効果は現実に生じる必要はなく、「そうなるだろう」という期待が市場で働けば、その方向に市場が勝手に動いていくことが予想される。

逆に、国内の製造能力が脆弱だと円安が進んでも輸出は増えない。足元で円安が止まらない現状は、「どうせたいして輸出は増えない」と市場が判断している証左と言える。

実際に、国内生産を増やすための設備投資が順調に増えている様子はない。

7月11日に公表された5月の機械受注統計は前月比マイナス3.2%と、市場予想を下回った。振れが大きい統計とは言え、円安で家計の消費マインドが悪化する中、「良い円安」の効果に期待する向きには残念な結果だった。

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