他方、筆者が指摘している「悪いJカーブ効果」とは、国内生産能力や競争力が弱くて円安でも輸出は増えない一方で、「悪い円安」によって国内の需要が落ちることで輸入数量が減少し、貿易収支が改善していくという考え方である。
通常の「Jカーブ効果」でも貿易収支は改善することが予想されるが、「悪いJカーブ効果」でも貿易収支は改善し得る。貿易収支だけをみればいずれも「Jカーブ」なのだが、発現のパスが異なることが重要である。
2022〜2023年はどちらの「Jカーブ」か
ここで、現状までの「答え合わせ」として、2022年度(円安局面)と2023年度(円安後)のデータを確認する。
円安が進行していた2022年度は、輸入価格の上昇によって貿易収支(金額)が大幅に悪化した。また、2023年度は輸出数量が小幅マイナスとなり、通常の「Jカーブ効果」が生じなかったことがわかる。
他方、2023年度は輸入数量が前年度比マイナス6.1%となり、輸入金額は大幅に減少した。その結果、輸入の減少によって貿易収支が改善した格好であり、「悪いJカーブ効果」の動きで説明できる。
「悪いJカーブ効果」によって貿易収支が改善したとしても、需要が減少して輸入も減少するという状況は日本経済が縮小均衡に向かっていると考えられ、まったくいい状況ではない。
貿易収支が改善しても円安が止まらない背景の一つとして、日本経済が縮小均衡に向かっているという事実がありそうである。
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