「リポビタンD炎上」背後に"男らしさ"の負の遺産 "女人禁制"からの急な方向転換が原因か【前編】

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いわゆる高度経済成長だった当時、栄養ドリンクは今と違って「薬」だった(今は「医薬品」または「医薬部外品」)。そのため、今よりも堂々と「滋養強壮」や「疲労回復」と謳うことができ、70年代の栄養ドリンクの広告やテレビCMに出演していたのは王貞治やガッツ石松など現役スポーツ選手(リポビタンD)、あるいは俳優の若山富三郎(味の素の「アルギンZ」)や山城新伍(ユンケル黄帝液)だった。

汗を流すスポーツ選手はもちろんのこと、CMでクジラ用の銛(もり)を投げつける若山、そして「チョメチョメ」でおなじみの山城は実に男らしい……。というよりも、後者のコワモテ俳優の2人は雄々しすぎる。

ただ、同時期に中外製薬の販売していた「新グロモント」のCMでは八代亜紀が「アゴ出すな!(「顎を出す」とは「疲れがドッと出る」ことを意味する)」と歌い、アルギンZのCMでは俳優の中村雅俊と相撲取りの朝潮太郎(4代目)がきれいな海の広がる砂浜で、外国人女性をナンパしようとするなど、栄養ドリンクのCMはすべてが男らしさ一辺倒ではなかった。意外にも、バラエティ豊かだったのである。

また、サラリーマンに向けて発売されているのは確かなのだが、オフィスや電車内が舞台ではなく、美しい自然を背景に旬な俳優を起用しており、その点は今の清涼飲料水のCMと大差ない気も。まぁ、ジュースのCMに「バブルスター」の山城新伍が登場することはなかっただろうが……。

70年代、リポビタンDは「男らしいCM」へ

実際、リポビタンDが「ファイト、一発!」と言い出したのは1977年の勝野洋と宮内淳が出演する広告からだ。ここからようやく「男2人」というホモソーシャルな雰囲気も出てきたのだが、まだこの頃はランニングしたり、サイクリングしたり、走る機関車に飛び乗ったり、裸参りに参加したり……。いくつか怪しいのはあるが、当時はまだ「さわやか」路線だったのだ。

80年代に入ると、リポビタンDのCMは勝野を残して、真田広之や渡辺裕之とバディを組むようになり、トロッコに乗ったり、崖を登ったりと、徐々に世間がイメージする「筋肉隆々の男2人」の方向に強化されていく。

そして、1987年に勝野から野村宏伸に変わったタイミングで海外ロケが中心となり、映像の迫力も俄然増していく。「肉体疲労時の栄養補給・滋養強壮に」というキャッチコピーはあるものの、普通に生きていて崖を登ることはないため、同商品はきっと「相当ハードなときに飲むもの」とイメージされるようになったのだろう。

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