「リポビタンD炎上」背後に"男らしさ"の負の遺産 "女人禁制"からの急な方向転換が原因か【前編】

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意地悪な言い方をすれば「女人禁制」の世界だったのだが、急な方向転換はトラブルのもとになりかねない。7月4日にインターネットニュースサイト「ねとらぼ」は「『鬼すぎない?』 大正製薬の広告が“性差別”と物議……男女の“非対称性”に『昭和かな?』『時代にあってない』」という記事を配信。

同記事いわく、電車内などに貼られているリポビタンDの広告の木南の側に添えられた「仕事、育児、家事。3人自分が欲しくないですか?」というコピーに苦情が殺到したらしい。要は「仕事、育児、家事を女性に押し付けていて、男性は家のことをなにもしないじゃないか」と、性別役割分業意識が問題視されたというのだ。

このことは翌日のインターネットテレビ「報道リアリティーショー ABEMA Prime」でも取り上げられ、「誰かを貶めるつもりはなく、根底には“応援したい”という思いがあるはずだ。怖いことを言わずに、そこは汲んでくれてもいいのではないか」(ミートたけし)や「当たり前のことを言ってしまっているので、男女を逆にすればよかった。男性のほうが“育児も家事も仕事も、リポビタンDがないとやっていけない”という宣伝のほうがおもしろいと思う」(薄井シンシア)などの声が上がった。

リポビタンD
男性タレントバージョンの広告(編集部撮影)

この問題はリポビタンDでなくとも、すべての広告やCMでも起こり得る可能性は十分にあった。一方で同商品がこれまで築き上げてきた「男らしさ」というイメージを払拭しようとしている段階だったため、これで炎上してしまうのは少し気の毒にも思える(なお、炎上と言っても、ネット炎上の世界では”ボヤ”程度と言えそうではあるのだが)。

とはいえ、なぜこの表現を誰も止めなかったのかとは思ってしまう。どうして、このような時代錯誤な広告表現が生まれてしまったのか?

そこで、ここでは栄養ドリンクの広告表現の変遷を振り返りながら、今回の炎上騒動が起きてしまった背景を探りたい。

黎明期、栄養ドリンクCMはバラエティ豊かだった

時系列に沿って、栄養ドリンク(のCM)の歴史を振り返っていこう。

初めてキャップ付きの瓶のリポビタンDの販売が開始されたのは、1962年のこと。佐藤製薬の「ユンケル黄帝液」や大鵬薬品の「チオビタ・ドリンク」の発売も60年代後半からだ。

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