たとえば、「こういう配車をされたらタクシードライバーはどう思うか?」「配車がいきなりキャンセルされたら、またはこんな順番で配車されたらドライバーはどんな気持ちになるか?」、あるいは「事業者がドライバーにどんな心情を持っているか?」といった、ドライバーと事業者の感情領域の話である。
逆にいえば、システムや事業内容をブラッシュアップするためには、ドライバーからどのような理解を得なければならないのかを、電脳交通が「どう理解するか」だ。
つまり、電脳交通にとっての「現場」とは、業務だけを指すのではなく、いま起きている問題の背景にある、論理だけでは説明できないような「もっとエモーショナルな部分にある」という解釈なのだ。
配車システムの機能をひとつ加えるにしても、経済合理性だけではなく、営業と開発の間で現場に関わる人たちの感情も踏まえた議論を進めているという。
ただし、こうした「現場」への対応を大事にしながら、企業としてさらなる成長を目指すには、電脳交通側が「現場に出向く数」「現場での作業や交渉の質」「現場から本部へのフィードバック」、そして「それらを総括する評価」などについての対応の進化が求められる。
「現場目線」といっても、実に奥が深い。電脳交通の経営陣も、そうした点はよく理解している。
規制緩和やライドシェアで生まれた「差」
もうひとつ、別視点での「現場目線」の議論がある。「現場や事業経営者の課題を解決するだけでは業界変革(社会変革)ができない」という強い意識を、電脳交通は持っているのだ。
そうした観点が必要とされる背景として、北島氏は「市場の大きな変化」があると話す。
たとえば10年ぐらい前までは、タクシー事業者の課題認識に大きな差はなかった。それが、タクシー事業の規制緩和やライドシェア導入の議論が高まったことで、自社の事業を積極的に変化させようとする事業者が増えてきているという。
そのため、課題認識とその解決方法に対するバリエーションも急増しているのだ。
また、地方と都市部、または地方でもエリアの属性で差が広がっている。これは、インバウンドの影響など、市場からのニーズでさまざまなケースが顕在化してきたためだ。
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