そうした、家業を下地とした事業環境の変革が、電脳交通のファーストステージ。ここから、地方の高齢タクシードライバーや事業者にとってのDXへのハードルを、少しずつていねいに下げていったのだ。
近藤氏は現場の声を重視し、年に約1000回ものシステムや機能のアップデートを行うことで、事業者の信頼を得てきた。実績として、大手事業者の配車室の人件費を1/3に削減し、そのうえで配車効率を2倍にした事例がある。
もうひとつ、電脳交通が全国から注目されている事業が、タクシー事業者向けの配車業務代行「Taxi CC」だ。
全国には約6000ものタクシー会社があるが、業務の中核である配車作業はアプリだけではなく、特に地方部では電話で行われる場合も少なくない。そうした中、近年はオペレーター不足にくわえ、深夜での電話対応が経営コスト面で難しいといったケースも多い。
電脳交通では、そうした課題を持つ事業者それぞれの配車業務を代行するだけでなく、近隣地域でのタクシーの空き状況を踏まえて、事業者同士をつなぐ役目も担っているのが特徴だ。
そして、B2B型事業からさらに一歩踏み込んだ試みが、自治体とともに地域交通の解決策を考える「DS Demand」である。2021年10月より、本格的に開始した。
これは、各地域の社会状況を電脳交通が把握し、タクシー、各種のデマンド交通などの最適化を行うもの。電脳交通が、全国各地の現場で培ってきた知見を生かそうという事業だ。
新潟県加茂市や青森県津軽郡など、すでに全国60以上の自治体と連携した導入事例や実証事例がある。
このように、電脳交通は単なるタクシー/ハイヤーのサービスプラットフォーマーではなく、地域交通の変革を目指す「新たなる動き」として捉えることができるだろう。
エモーショナルな部分=「感情領域」へ
ここからは、電脳交通が目指す「新しい動き」について深掘りする。話を聞いたのは、取締役最高執行責任者(COO)の北島昇氏だ。
まず、電脳交通のウリである「現場目線」について詳しく聞くと、「論理だけではなく、エモーショナルな部分」という点に対する配慮を強調した。
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