「大正製薬の広告炎上?」怒る人は本当に多いのか 企業はネットでの批判に翻弄されるべきではない
このときも、SNSでは賛否両論が起きたが、話題量は今回のリポビタンDの比ではなく、本案件について、X上で数万件の投稿があり、2ちゃんねる(現在は5ちゃんねる)には複数のスレッドが立ち、多くのネットメディアで取り上げられた。ここまで行くと「炎上」と言っていいレベルだ。
しかしながら、この動画は取り下げられなかった。取り下げないことで批判を浴び続けたかといえば、そうではなく、しばらくして話題は沈静化した。
取り下げないで炎上するケース、しないケース
「炎上したら取り下げる」というケースが多いのだが、「取り下げない」という選択ももちろんある。「ムーニー」の動画を取り下げなかったことが適切な判断だったのかどうかというのは議論が分かれるところだろうが、少なくとも取り下げないことが問題視されはしなかったようだ。
同じジェンダー関連で問題になった動画で、すぐに取り下げなかったことで批判が続いた事例もある。ムーニーの動画と同じ2017年にYouTubeなどで公開された、宮城県のPR動画である。
タレントの壇蜜さんを起用したこの動画。同県の観光PRキャラクター・むすび丸が壇蜜さんに「宮城、イッ・ちゃ・う?」と耳元で囁かれて鼻血を出したり、壇蜜さんに「上、乗ってもいいですか?」と頭を撫でられた亀がムクムクと大きくなったり……。「性的過ぎる」という批判が起きたのだ。
初期のSNSでの話題量はむしろムーニーの件よりも少なかったのだが、継続的に議論が続き、批判もなかなか収束しなかった。動画は結局、公開から約2カ月後に削除された。
こちらは、震災復興予算が使われていたこと、自治体のPR動画だったこと、必然性がなく性的表現がされていたことなどが影響していると思われる。
取り下げるのが適切かどうかは、批判の大きさや、批判の内容によるものよりは、表現そのものが適切かどうかであったか否かで決まってくる。
筆者は、過去に広告の炎上の分析を行い、対応策の助言をしてきたのだが、近年はネットメディアの報道に翻弄されることが多くなった。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら