ここで、若い世代からの教えの一例を紹介します。
あるとき、私は20代の女性社員にSNSに投稿しようとしている動画を見せました。すると、彼女は即座に「動画をしっかり作り込みすぎていますね」と、コメントをくれました。
これまでクリエイターとして、じっくりと細部に気をつけながらCMを作ってきた身としては、最初は彼女のアドバイスの意図がわからず、戸惑うばかりでした。彼女はさらに、こう教えてくれました。
「世の中はもっと気軽なものを欲しがっているんです。かつてのように“インスタ映え”も、求められていません。今は“盛っちゃダメ”なんです」
彼女が言うには、世の中の人が興味を抱くのは「他の人が何をしているのか」ということ。例えば、朝起きたばかりの顔を見せるようなもののほうが、よほど関心を持ってもらえるというのです。
20代の部下に投稿を添削してもらう
あるとき、私は大寝坊してイベントに大幅に遅刻するという失敗をやらかしてしまいました。
焦りながら現場に向かう途中、ふと彼女の助言を思い出し、あわてふためく自分を撮影し、その様子をInstagramとX(旧Twitter)に投稿しました。その結果、1万人もの人たちがその動画を見てくれることになったのです。
「おじさんの遅刻」という、ある意味どうでもいい動画を、これほど多くの人たちが見てくれるという状況はなんとも不可解ですが、現実に起こったことでした。
その驚くべき経験をして以来、Xを投稿するときは、事前に20代の部下に添削してもらうようになりました。エステー時代は役員だった私が、一般職の社員に添削を受けるというのは、一昔前には考えられない光景だと思います。
「もっと言い回しを柔らかくして」「ちょっとまわりくどい」。このように、びしばし問題点を指摘され、「やば! 昭和! 爺さんくさ!」と、厳しく叱咤激励されます。
でも、この感覚に素直に従うことで、Xの拡散力は格段に上がります。確実に「いいね」を押される数が数倍に増えたのです。
Xの投稿案はあらかじめ、部下のスタッフに見てもらっています。

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