営業利益率15%以上、縮小市場でも儲かる!--ネスレ日本・高岡社長が語る高収益体質の秘訣
スイスに本拠を置く食品世界最大手、ネスレ。グループ全体の2011年上期(1~6月)業績は売上高3兆6904億円(前年同期比5%減)、営業利益5589億円(同4%減)と減収減益だったが、為替変動や事業売却などの影響を除くと売上高は同7.5%増と実質的には好調を維持している。
日本法人であるネスレ日本(本社・神戸市中央区)も同1~6月期は増収増益(数値は非公表)で、営業利益率5%程度にとどまる日本の食品メーカーを尻目に、ネスレ日本は同15%以上を達成したという。
現在、ネスレ日本を率いる高岡浩三社長は、副社長時代からチョコ菓子「キットカット」やインスタントコーヒー「ネスカフェ」のビジネスモデルを抜本的に変え、採算改善に取り組んできた人物。8月末、事業概況と下半期の経営戦略についての説明会後に「東洋経済オンライン」のインタビューに応じた高岡社長に、日本国内市場における戦略などを聞いた。
--日本の食品大手は営業利益率が高くありませんが、ネスレ日本が高収益体質を確立できているのはなぜですか。
もともとネスレ日本は、ネスレグループの中で低収益体質だったが、2000年代に主要ブランドで戦略を変え、利益率が大きく改善した。日本の食品業界の課題は、テレビCMなどの広告宣伝費が高く利益が上がらないこと。
弊社でも1989年6月から2001年3月まで不二家との合弁会社で販売していた「キットカット」(01年4月からは単独で販売)でもまさに同じ問題があり、はっきり言って「お荷物」だった。
私は01年にネスレコンフェクショナリーのマーケティング本部長として、採算性改善のために送り込まれた。その後、02~03年冬の受験期に、テレビCMをゼロにするという新戦略を打ち立て、代わりに始めたのがサンプルの配布だ。
九州のスーパーから、キットカットが「きっと勝つよ」という言葉に似ており、受験生が験担ぎに使っているという情報を聞き、まずは受験生が利用するビジネスホテルにサンプルを配布した。
すると、受験生の口コミで評判が伝わった。宣伝費用がゼロにもかかわらず、キャンペーンの効果が定着した07年1~3月期は、開始前の02年の同時期と比べて売上高が1.5倍に増加。販促費を使わないと成長できないというこれまでの姿から、新しいビジネスモデルを打ち立てることができた。