「オバマ政権の大失政」が生み出したトランプ現象 告発された「金融業界癒着」「中間層救済放棄」
リーマン破綻を受けて、オバマ政権発足時には、カリフォルニア大バークリー校教授から招いたクリスティーナ・ローマー大統領経済諮問委員会委員長が深刻な不況と失業を回避するため少なくとも1兆2000億~1兆8000億ドルの景気刺激策が必要だと主張していたのに、金融業界の意向を受けたローレンス・サマーズ国家経済会議委員長は財政赤字が投資家や市場に悪影響を及ぼすと強く主張。
オバマも同調して、刺激策は8000億ドル規模に縮小された。
結果、刺激効果は出ず、失業率は10%まで上昇し、ローマーは再度大型刺激策を提案したが、今度は金融業界に配慮するティモシー・フランツ・ガイトナー財務長官らによって阻まれた。オバマも連邦予算の赤字削減ばかりにこだわった。
景気は回復せず失業が増える中で、住宅ローン破産は急増し、その数は1000万件を超え、ローン返済中の全世帯の4分の1に及んだが、オバマ政権はローン破産救済策をまったくとらないままだった。破産宣告前の返済者についてとられた救済策も銀行側の消極姿勢でほとんど実行されなかった。
当時の民主党は連邦議会でも上院で60議席と議事妨害を阻止できる多数を占め、下院でも圧倒的多数だったから、いくらでも景気刺激策や破産救済策を通すことができたのに、機会を逸した。そのためアメリカの中間層の崩壊を招き入れてしまう。
オバマケアは中間層から貧困層への再分配か
日本では一般にオバマ政権の進歩派的な成果のようにみられている医療保険制度改革(通称オバマケア)も、実態は財政赤字問題や保険・医療・製薬各業界への配慮に縛られ、できあがった複雑な制度は必ずしも中間層に歓迎されなかった。
無保険者が減る効果はあったが、中間層では保険料が上がるケースが多く出た。また新制度により老人医療保険予算が削減された。世論調査では市民の過半数がオバマケアについて「好ましくない」と答える状態が続いた。オバマケアは(富裕層でなく)中間層からむしり取って、貧困層に与える再分配だという印象が強まるだけであった。景気回復で失敗した穴を、医療保険制度改革で埋めようとしたが、これも保険会社などの利権に気を遣って達成できず、逆効果になったという構図だ。
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