「オバマ政権の大失政」が生み出したトランプ現象 告発された「金融業界癒着」「中間層救済放棄」
アメリカの白人の中下層階級に起きている「絶望死」現象を見いだしたプリンストン大学のアン・ケース、アンガス・ディートン両教授は、政治力と財力が集中した政治環境の中で民主党も共和党も金持ちたちだけの政治しか行っていないと批判。白人労働者階級の大半は「選挙は富裕層や大企業によって操作されているので自分が投票しようがしまいが関係ない」と考えている実態を紹介し、2016年にトランプが大統領選で勝利したのはそうした点を考慮すれば「理解可能だ」と述べている(アン・ケース、アンガス・ディートン『絶望死のアメリカ――資本主義がめざすべきもの』松本裕訳、みすず書房、2021年、15頁)。
トランプ・サンダース現象とは疑似革命
まさに不平等の末に、下層の人々は民主主義から疎外されていると感じている。選挙も恒常的にエリートが勝手に操作していると考えているのだから、「大統領選結果はフェイクだ」とトランプが声を挙げれば、むしろ「やっと本当のことをはっきりいってくれる政治家が現れた」と思っても不思議はない。
実際、アメリカでは一部エリートによる支配が固定化して、民主主義は正常に機能しなくなっているということを示す優れた分析はバーナム、ミルズ……と先世紀後半からずっと続いてきたのだから、選挙はフェイクだというのは本質を突いたところさえあるのだ。
格差問題を富裕層への減税が理由だと単純化する向きが日本には多いが、貧困問題研究などでノーベル経済学賞を得ているアンガス・ディートン教授らは「富裕層への厳しい課税は、貧困層にとってたいした救済にはならない」と断言している。問題の根源は不平等をつくりだす利権癒着、ロビー政治、市場支配力の悪用……といった「不公平なプロセス」である、という。まさに、それがオバマ政権で起きたことであろう。つまり構造的問題なのである。
こうした不平等の構造は、場合によっては暴力を伴う革命的変革が起きなければ解決できないといわれる。トランプ・サンダース現象とは疑似革命といってよいのかもしれない。ただ、本当の革命ではないから、エリート支配構造は終わらない。異様な格差を生む不平等の構造が変わらない限り、支配される側の怒りと怨嗟の「ゴジラ」であるトランプは、いくどでもアメリカの政治に登場することになるのだ。
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