「オバマ政権の大失政」が生み出したトランプ現象 告発された「金融業界癒着」「中間層救済放棄」

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ごく最近では、民主党リベラル系のトップ・ジャーナリストの1人で多くの優れた著作を持つジョン・ジュディス(1941~)と、民主党系で人口動態による政治分析で知られるルイ・テシェイラによる共著『民主党はどこに行った』(2023年、Where Have All the Democrats Gone?:未邦訳)があらためて詳細を明らかにしている(オバマ政権の金融業界との関係とリーマン危機後の中間層救済放棄に関する初期の告発としてはThe New Republic 記者Noam Scheiber The Escape Artists: How Obama’s Team Fumbled the Recovery, Simon & Shuster,2011が、最近公刊された内部告発書としてはオバマ政権移行チームの幹部で元連邦通信委員会(FCC)委員長Reed HundtによるA Crisis Wasted: Barack Obama’s Defining Decisions, Rosetta Books, 2019がある。オバマ政権のリーマン危機失政についての以下記述は主として近刊John B. Judis and Ruy Teixeira, Where Have All the Democrats Gone?, Henry Holt & Co., 2023, Chapter Fourの記述に基づく)。

オバマ失政のあらまし

うち、最も新しいジュディスらの著作に従って、オバマ政権のネオリベラルな失政を整理しておく。同書の第4章「オバマと失われた機会」はこの問題を詳述している。

オバマは投資銀行リーマン・ブラザーズ破綻直後に政権を獲得した。大恐慌時代のフランクリン・ルーズベルトのように大危機の中で景気と雇用の回復を図って、民主党が金融業界の言いなりの政党でなく「普通の市民」の側にあることを示す絶好の機会を得たはずだった。

しかし、それを実行せずに大きな機会を逃した。選挙に勝利すると、オバマはそれまでの金融業界批判をやめて、クリントン政権でおなじみのウォール街人脈を経済担当閣僚や高官に任命する。当時シティバンク会長になっていた元財務長官ロバート・ルービンの子飼いのような人物ばかりだ。明らかに、一連の金融危機に関して刑事事件になるような厳しい捜査などさせないという業界へのシグナルだった。

その後、実際に大手保険会社AIGに1730億ドル(26兆円)もの救済資金を投入しながら、同社役員らがそこから1億6500万ドル(250億円)のボーナスをせしめたことが露見し、大きなスキャンダルとなってもおとがめなし。

製造業の大手自動車ゼネラルモーターズ(GM)に対しては政府救済資金投入にあたって最高経営責任者の辞任を条件としたのに対し、シティグループやバンク・オブ・アメリカなど金融業界への救済資金は、そうした条件もなしに投入された。明らかに顧客を欺したようなケースがあっても、司法省はまったく手をつけていない(最終的に民事で決着が図られた)。

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