映画館にシニア呼び戻す「ベルモンド作品」の魅力 仕掛け人の江戸木純氏が語った企画の経緯

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――2020年からはじまったジャン=ポール・ベルモンドの特集上映「ベルモンド傑作選」も非常に好評で、6月28日からは新宿武蔵野館で第4弾となる「グランドフィナーレ」が行われるなど、お客さんも大勢来場しています。

第1弾のときには、昔、ベルモンドを宣伝したことのある人から「ベルモンドは入らないよ!」なんて言われたんです。

ちょうどコロナが始まった頃だったので、シニアが劇場に来なくなっていたのですが「ベルモンドがシニアを呼び戻した」と言われたぐらい、新宿武蔵野館でも、その年いちばんに入った企画でした。

第2弾も、第3弾も大勢来ていただきましたし、待っていてくださる方もいるんですよね。新宿武蔵野館の若いスタッフも、ベルモンドは素晴らしいと楽しみにしてくれていますし。

ベルモンド傑作選
江戸木純(えどきじゅん) 1962年東京生まれ。映画評論家、プロデューサー。1998年に配給会社エデンを設立。執筆の傍ら『ムトゥ 踊るマハラジャ』『ロッタちゃん はじめてのおつかい』『処刑人』など既存の配給会社が扱わない知られざる映画を手がける。『王様の漢方』『丹下左膳・百万両の壺』では製作、脚本を手掛けた。『死霊の盆踊り』 『ベルリン忠臣蔵』から『バーフバリ王の凱旋』まで、ビデオバブル期から現在まで、付けた邦題&キャッチコピーは数百本。著書に『龍教聖典・世界ブルース・リー宣言』などがある(写真:筆者撮影)

この企画自体、実は30年ぐらいかかって実現したものなんです。元々VHSビデオの時代に、映画の買い付けの仕事をしていたんですが、その時はジャン=ポール・ベルモンドほどのスターであってもVHSになってない作品が案外あったんです。

僕たちの世代はジャン=ポール・ベルモンドをスターとして知っている世代なんですけど、1970年代の後半あたりから、彼の映画は日本で当たらなくなったんです。

フランスではヒットでも日本では当たらず

フランスでは1980年代もマネーメイキング・スターで、フランスの国宝と呼ばれるほどの大スターなんですけど、映画自体はフランス版のスティーヴン・セガール映画みたいなゴリゴリのアクションやドタバタコメディーで。

それがフランスでは大ヒットしていたんですが、そういう映画が日本に入ってこなくなった。たまに日本で上映しても全然客が入らないから、「ベルモンドは当たらない」というのが日本の興行界の常識になってしまった。

でも僕はベルモンドが好きだったんで、なんとか日本で上映できないかと思っていたんですが、フランスでは超一級のタイトルなので安くしてくれないわけなんです。だから誰も買わなくなっちゃって。どんなに有名な人でも、作品が観られない状態が30年も、40年も続くとみんな知らなくなってしまいますよね。

だからベルモンドをやりたいとずっと言ってきたんですけど、全然実現できずにいた。それから20年、30年とたったあたりで、フランスで2Kリマスターがつくられるようになってきて。

それでキングレコードの担当の方に「こういうのできないですかね?」と話したとき、「どうせやるなら、まとめてやったらどうでしょう?」と提案していただいて「傑作選」がスタートしたんです。

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