人間とコウモリ「意外な共通点」から覚える親近感 一見すると哺乳類とはかけ離れた印象を持つが

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鳥と同様、日暮れギリギリまで公園で遊ぶのが私の常であった。夕方になり、ああ、鳥さんもお家に帰るのだから私もそろそろ……と帰りかけるころに、やけに活発に飛び回っている動物がいるではないか。当時、ドラキュラという存在が怖くてたまらなかった私は、ドラキュラと共にいつも登場するこの不気味なコウモリを見てひどく怯えたものだった。

コウモリ類への親近感

一方、コウモリは、日本や台湾などでは益獣として重宝されたり、幸運の象徴として親しまれてきた歴史もある。実際に、私が台湾の南西に位置する第2の都市・台南市を調査で訪れた時、コウモリをモチーフにした家紋やお札があちこちの家の軒先に祀られていた。聞くところによると、家を守ってくれる神様として崇められているそうだ。

また、コウモリの顔つきはブチャ可愛い種が多く、不気味なイメージというよりは、イラスト化されたりマスコットになったりする例も多く、一部の人には絶大な人気がある。

エコロケーションといえば、海に棲むハクジラ類も行っている。それもあって大人になった現在では、怖がっていた過去もなんのその、それだけでコウモリ類に親近感を覚えるようになっている。

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ただし、コウモリ類のエコロケーションは、私たち人間と同じ声帯(声門)から超音波を発しているのに対し、ハクジラ類は、鼻の奥にある鼻声門を活用しているところが違う。

サル目と翼手目が、なぜ同じタイプの子宮を選択しているのかについては、進化の過程でそれぞれが獲得した形質であり明快な解釈は難しい。

単一子宮は、5種類の子宮の中でも最も単純な構造であり、基本的に1頭の子どもを子宮内で成長させる戦略が共通している。

単純と聞くと、工夫や戦略がない印象をもたれるかもしれないが、逆に単純であるからこそ長年にわたって維持できていると捉えることもできる。

私たちと同じ子宮をもつコウモリ類に対し、幼い頃の怖い思い出は瞬く間に払拭され、ますますコウモリ類に親近感を覚えるようになっている今日この頃である。

田島 木綿子 獣医師、国立科学博物館動物研究部脊椎動物研究グループ研究主幹、筑波大学大学院生命環境科学研究科准教授、日本獣医生命科学大学獣医学部客員教授、博士(獣医学)

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たじま ゆうこ / Yuko Tajima

1971年生まれ。日本獣医生命科学大学(旧日本獣医畜産大学)獣医学科卒業。学部時代にカナダのバンクーバーで出合った野生のオルカ(シャチ)に魅了され、海の哺乳類の研究者として生きていくと心に決める。東京大学大学院農学生命科学研究科にて博士号取得後、同研究科の特定研究員を経て、2005 年からアメリカのMarine Mammal Commission の招聘研究員としてテキサス大学医学部とThe Marine Mammal Center に在籍。
2006 年に国立科学博物館動物研究部支援研究員を経て、現職に至る。海の哺乳類のストランディング個体の解剖調査や博物館の標本化作業で日本中を飛び回っている。本書では獣医学の知見を活かして海と陸の哺乳類を対象に繁殖戦略を語り尽くす。著書に『海獣学者、クジラを解剖する。』(山と溪谷社)ほか。

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