佐賀に新大学は必要?「県内進学率16%」の危機感 地元で賛否、少子化や定員割れでも大学作る意義

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大学の地域貢献について今村氏は「地元への就職以前に、飲食店に行くと『アルバイトをしてくれる学生を待っていますよ』とよく声をかけられる」と笑う。そして「武雄アジア大学は座学中心の大学ではなく、地域に貢献し協働する大学。学生が地域に行き、東アジアにも出向き、各地の問題解決を一緒に考える。本当にアクティブな人間力を育成する大学にしたい」と語る。

とはいえ県民の目は依然厳しく「大学だったら長崎や福岡に行けば十分じゃないか」という声は根強い。全国の大学の過半数、短大は9割が定員割れの状態だ。今村氏は「この実態は個別大学の努力限界を超えていないだろうか? 大学に原因を求め、経営に欠陥があるみたいな決めつけ方はいかがなものか」と問題視する。

地方大学が淘汰されて起きること

定員割れだと「誰でも入れる大学」「Fラン(入学者の基礎学力が十分ではない偏差値の低い大学を称する)」などと揶揄する声もある。今村氏は、経営努力や教育改革が必須であることを前提にしつつ「本当に人口減少、少子化だからといって、地方の大学は淘汰されて消えてなくなってもいいのだろうか」と語る。

佐賀女子短期大学の今村正治学長は、立命館アジア太平洋大学の元副学長として同大学の立ち上げにも深く関わった(記者撮影)

今村氏が学長を務める佐賀女子短期大学では、就職率が100%、うち地元就職率が79%となっている。卒業生の進路は、介護福祉士や保育士、幼稚園教諭、養護教諭、小学校教員のほか、企業に就職する学生もいる。介護福祉士の大半は、留学生となっている。

「彼女たちがいなくなったら、皆さんの老後は大丈夫ですか? 保育士が確保できないために保育園を閉園することも起こりうる。大学が果たしてきた役割を評価せず、定員充足率や経営状況、偏差値といった視点でしか見られないのはいかがなものか」(今村氏)

そのうえで「高等教育を卒業した人たちが地方で活躍をすることこそが、地方創生にとって大事」と続ける。

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