「紳助騒動」でも明らかになった吉本興業の非上場化メリット、“行儀悪い”非上場化に株主からの訴訟も
吉本非上場化がもたらした罪
吉本の非上場化は、会社自身にとっては合理的な選択であっただろうが、株主にとっては罪な選択だったという側面があることもまた否定できない。
吉本興業は06年2月に子会社のファンダンゴを上場させ、そのわずか1年7カ月後の07年9月に同社を上場廃止にさせている。吉本興業の持株会社化がその理由で、このときはキャッシュアウトではなく、ファンダンゴの株主に吉本株を渡す株式交換だった。
とはいえ、ファンダンゴの公募価格は4900円。吉本株との交換比率から計算される価格は2440円だったので、ファンダンゴ株主としては怒り心頭だったはずだ。
それから2年後に、今度は吉本本体が、それもキャッシュアウトによる非上場化に踏み切る。
持ち株会社化からの2年間で、吉本興業の株価は4割ダウンした。TOB価格は持ち株会社化当時の吉本の株価の8割程度でしかなく、旧ファンダンゴ株主にしてみれば、まさに踏んだり蹴ったりである。
キャッシュアウトは金銭で株主を追い出すので、追い出される株主は、買われる会社の成長シナジーから永久に遮断される。
上場会社が上場子会社を完全子会社化する際にも、子会社側の株主追い出しは実施されるが、多くの場合は金銭ではなく、買収者である上場会社自身の株を渡す。買収者の成長を通じ、買われる会社の成長シナジーにあずかれるという利点がある。それがないキャッシュアウトは、より罪が重い。会社法が明確に認めている行為なので合法だが、極めて行儀の悪い行為である。
追い出される株主は、1人の株主に3分の2の議決権を押さえられたら、追い出されることそのものに抵抗の余地はない。