「紳助騒動」でも明らかになった吉本興業の非上場化メリット、“行儀悪い”非上場化に株主からの訴訟も
タレント・島田紳助氏の突然の引退宣言。何の事前準備もなかったレギュラー降板によって、テレビ局に与える損害がいったいいくらになるのか、現段階では明らかになっていないが、一部報道では3億円とも、あるいは8億円とも報じられている。
テレビ局が受けた損害は、特段の事情がないかぎり、島田紳助氏の所属事務所である吉本興業が賠償すべきものと考えるのが普通だ。
稼ぎ頭の島田紳助氏の引退で、今後の収益そのものも後退するであろうから、吉本興業が上場会社のままだったら、少なくとも業績予想の下方修正を余儀なくされた可能性は高い。
暴力団との根深い関係を伝える報道も日を追うごとに増えており、上場会社のままだったら、どれほどの説明責任を問われたかわからない。
所属タレントの管理不行き届きを理由に、取締役が株主代表訴訟の標的になった可能性も否定できない。
そういった意味で、今振り返っても、非上場化は吉本興業にとって実に賢明な選択だったといえる。とはいえ、同社の非上場化は、あまりにも突然かつ性急だった。
上場廃止で株主は「吉本応援団」オンリーに
吉本興業は終戦から4年後の1949年5月に上場しているが、上場から満60年と4カ月後の2009年9月11日(TOB開始日は14日)、突然上場廃止宣言を出した。
元ソニー社長の出井伸之氏を代表に頂くファンド会社・クオンタムリーブが、吉本買収専用のペーパーカンパニー(特別目的会社=SPC)を組成。そのSPCでTOBを実施し、TOBに応募しなかった株主からは、TOB後に開催する臨時株主総会を通じ、株主本人の意思とは無関係に、強制的に保有株を買い上げてしまう、昨今大流行中の「キャッシュアウト」という手法を使った(写真は非上場化の記者会見)。