【産業天気図・鉄鋼】長期契約向けの価格がカギ握る「晴れ」の紫外線量

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大手鉄鋼各社が4月末に発表した今期業績予想は軒並み「大幅減益」。歴史的には、なお高い利益水準ながら、さすがに前期、とりわけ前上期に異例の市況高を謳歌した業界だけに、その反動は免れそうもない。業界の天気は従来の「晴天」から「晴れ」へと紫外線が弱まりそうだ。
 前下期からは海外向けを中心に価格が軟化し、各社、減産体制を強化した。市況をにらみつつ機動的に減産するという基本スタンスは今期も変わらない。粗鋼生産量をどの社も「前期並み」としているのは、その現れだ。もっとも、各社が発表した減益予想には、ふたつの特殊要因がある。一つは前期に数百億円もの利益押し上げがあった在庫評価差効果がなくなることだ。これは昨年、市況価格が右肩上がりをしていく中で、安く仕入れた在庫を使って高く売った一時的要因だ。新日鉄<5401.東証>では前期、この効果が実に830億円もあった。もう一つは、鉄鉱石メジャーとの価格交渉が異例に長引く中で業績見通しを発表せざるを得なかったため、最悪のケースを想定し、各社“腰ダメ”の数字しか発表できなかったという点だ。鉄鉱石価格は結局、4年連続の値上げで、今年は19%の引き上げで合意した。今後の焦点は、この値上げ分を自動車メーカー等とのいわゆる“ひも付き価格”にどこまで転嫁できるかに移る。
 ただ、自動車業界にとっても昨年まで3年連続で値上げを飲んで来ただけに、今年はさすがに難色を示すというのが大方の見方だ。また、鉄鉱石値上がりの一方で、使用量で鉄鉱石の半分・価格では2倍の原料炭価格は8%の値下げで先行決着しており、鉄鉱石と合わせ見るとコスト的にはいわばイーブン。これも難色を示す材料だ。が、業界では早くも転嫁交渉を先取りして「4半期決算発表と同時に、各社上方修正してくるのでは」との観測も浮上してきている。
【山本隆行記者】


(株)東洋経済新報社 会社四季報速報プラス編集部

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