自動運転実験でトップを独走する中国の凄み 当局の統制で中国メーカーの実験に障壁なし
「安全性について過剰に心配する必要はないと思う。安全性の承認を受けているはずだから」。多くのバイドゥ・ロボットタクシーが立ち寄る武漢の晴川閣近くで小さな食料品店を経営するジャン・ミンはそう語る。
中国が自動運転車の開発でトップを走っているもう1つの理由は、データの管理が厳しく、絶えず強化されてきたことだ。中国企業はアメリカやヨーロッパに重要な研究センターを設置し、現地で得られた成果を本国に送っている。
しかし、中国で得られた研究成果は国外に持ち出すことが一切許されていない。その結果、外国の自動車メーカーが、中国で学んだことを他国で販売する自動車のために利用するのは困難となっている。
他国では安全問題で実験停滞
安全性の問題も中国のリードにつながっている。中国が自動運転技術の実験を加速させる一方で、ほかの国の企業や規制当局は慎重姿勢を強めているためだ。
ゼネラル・モーターズ(GM)のロボットタクシーサービス「クルーズ」は昨年秋、歩行者をはねて引きずる事故を起こし、アメリカでのサービスを停止した。歩行者が人間の運転する別の車両にはねられ、ロボットタクシーの進路に飛び出してきたことで起きた事故だった。
その後、カリフォルニア州の規制当局は同社の運行許可を取り消した。クルーズは現在、アリゾナ州フェニックスでロボットタクシーのテストを限定的に再開している。
グーグルの自動運転車部門だったウェイモは、フェニックス郊外とサンフランシスコで200台以上、およびロサンゼルスとテキサス州オースティンで50台近くの自動運転車をテストしている。ウェイモは先月、連邦規制当局から2度にわたって、同社の自動運転車の安全性が調査の対象になっているという通知を受けた。