航空管制官が日本の空港でも英語を使う理由 ミスが許されない環境のコミュニケーション
また、パイロットとの交信中に聞き慣れない言葉が出てきたときにも、フォネティックコードで確認する場合があります。よくあるのが、機内で急病人が出たケース。管制官は必要に応じて、具体的な病名を確認することがあります。
たとえば、「てんかん」の発作で倒れた、という場合、てんかんは英語で「epilepsy」です。管制官はいくら英語が堪能だとはいっても、病名などの単語までは把握できていないこともあります。そんなときは、フォネティックコードを使って「エコー、パパ、インディア……」とつづりを伝えてもらうことで理解できます。
羽田の管制塔は「トーキョータワー」?
航空会社のコールサインにも、フォネティックコードを使うことがあります。無線で交信する際は、最初にコールサインで呼びかけます。航空会社のコールサインはアルファベット3文字で、JAL(日本航空)なら、「JAL(ジャパン・エア)○○便、こちら管制塔」と交信を始めます。「ジャル」でも「ジャパンエアライン」でもなく、「ジャパン・エア」としか呼んではいけません。
しかし、ときどきチャーター機など、聞き慣れない会社の便が来ることがあります。そんなときには「THY(タンゴ、ホテル、ヤンキー)○○便、こちら管制塔」などと呼び出すことが可能です。ちなみに、「THY」はトルコ航空のことで、コールサインは「ターキッシュ」となります。
個人用や社用のビジネスジェットなども、すべてアルファベットのコールサインがあり、面白いものだと日産は「NI55AN(ノベンバー、インディア、ファイブ、ファイブ、アルファ、ノベンバー)」というコールサインの機体を持ちます。数字の「5」が「S」に似ていることから、そのような登録名を使っているようです。
ちなみに管制塔のコールサインは「タワー」。羽田の管制塔は、正式名称である東京国際空港から取って、「トーキョータワー」と決められています。
重大な聞き間違いを防ぎたいときも、フォネティックコードは便利です。たとえば、到着機や出発機に旋回を指示する場合、右旋回なら「ライト・ターン」、左旋回なら「レフト・ターン」といいます。
ところが、意外に思うかもしれませんが、「ライト・ターン」の指示に対して、パイロットが「レフト・ターン」と復唱してくることもあります。音声の単純な聞き間違いのケースが多いですが、「通常、この飛行経路ならレフト・ターンだ」と思いこんでいるため、意識が引っ張られた結果、そう聞こえてしまっているのではないか、とも考えられます。
このような場合も、ライトの頭文字である「R」を強調して、「ロミオ・ターン」と言い換えることで、間違いを正すことができます。
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