男児4人の母はなぜ「起業」を選んだのか 子だくさんワーキングマザーの仕事論<4>

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幸いにもそれまでの頑張りが評価され、席を空けて待ってくれていた学校に、産後まもなく現場復帰した。復帰後も日本語教師の仕事は面白く、子育てが落ち着いたら今度は非常勤ではない、専任講師を目指そうと目標を掲げた。3人の子どもを育てながら、なんとか仕事に邁進していたが、4年後に4人目を妊娠する。今回は想定外だったという。

「もうちょっと我慢すれば思い切り働けると思っていたところでの妊娠でした。しかも、安定期に入る前に切迫流産となり、泣く泣く仕事をあきらめざるをえませんでした」

それでも働きたいと起業を決意

東京都小平市にあるオフィス。日中は外出も多い。就職を希望する留学生と企業経営者の交流イベントも定期的に開催している

しかし、小野さんは働くことをあきらめなかった。出産後、まだ床上げもしないうちに、自分のこの先の進路について思いをめぐらせ始めた。偶然、市の広報紙を読んでいるときに「地域で起業」という見出しが目に飛び込んできた。それはコミュニティ・ビジネスのセミナー案内だった。ここで小野さんは、働き方の選択肢のひとつとして起業を思い至る。

早速、そのセミナーに参加した。地域在住の外国人ママや、国際結婚した女性を登用する翻訳サービス会社を作りたいというプランを胸に、起業のノウハウや、資金調達や事業計画の立て方などについて教えを受けた。折しも、政府による起業助成金制度が施行されたタイミングだった。そのチャンスを生かすべく、翌夏に開催されるビジネスコンテストに向けて、起業準備に拍車がかかった。

「起業準備塾で、短期間のうちに事業計画書やスライド作成、スピーチ練習に明け暮れました。課題が盛りだくさんなうえに、4人の子どものケア。気を抜けばパンクしそうな私を、全面的にサポートしてくれたのが夫です。1カ月の育休を取得してくれたことはうれしい驚きでした」

聞き上手な夫は小野さんのグチに静かに耳を傾け、悩みを相談すれば寄り添ってくれる。この強力なサポートが、小野さんのコンペティション準備を後押しした。

事業内容については何度も練り直し、最終的に留学生を対象とした職業紹介事業にたどり着く。日頃から、外国人留学生が日本での就職活動になじめず苦労する現場を目にしてきたという経験があったからだ。事業計画書を提出した100人前後の候補者の中から本選の18人に残り、最終的に7位に入賞。「内閣府地域社会雇用創造事業優秀賞」を受賞し、返済不要の助成金170万円を手にした。すぐにオフィスを構え、39歳の年末に会社を設立した。

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