東京「どの駅」「どの区」が今後、価値が上がるのか 「昼間人口比率」に見る「住むべきエリア」正解は

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その反動も手伝い、アベノミクスが仕掛けたともいえる開発ラッシュは、JR総武線の小岩駅(江戸川区)において、激しいものになっている。

小岩駅の南側には巨大なビルが建ち、北側には広大なエリアで再開発が行われており、今後は三井不動産などのタワマンが林立するはずだ。

かつて小岩の代わりに開発された隣の新小岩駅周辺など、「新」という名前も古びて見える。

下町の「2つの亀」に大注目

新小岩駅より1つ都心寄りに位置するJR平井駅も、これまで何もないと言われてきたが、駅前にタワマンが建設中だ。

さらに都心寄りの亀戸駅(江東区)周辺にも億ションが乱立し、下町らしさは失われつつある。ここは時計のセイコーグループの城下町だったが、工場用地などが次々と商業開発され、現在はその周辺にタワマンが建設されている。

JR常磐線の亀有駅エリア(葛飾区)でも再開発が進みそうだ。

今後、「亀」のつく地域を見くびってはいけない。

これまで、「都心=オフィス」「郊外=住宅」とされてきた。

しかし住居の都心回帰により、タワマンなど垂直展開が進み、港区や千代田区を中心とした垂直エリアが、郊外の水平的な広大な住宅地需要を奪っている。

オフィスのほか、住宅地の開発フロントは湾岸エリア(築地・豊洲・晴海など)、さらに東部の下町に延びていく。

小岩、亀戸、亀有などの開発によって、千葉県民は(値段は高いが)東京回帰の好機にあるといえる。

その分、幕張副都心などは苦境に陥る。「千葉都民」の通勤の足だった京葉線の快速電車が大幅減となるのも、こうした背景がある。

2024年、いや2030年の東京の昼間人口重心は、さらに東にシフトしているだろう。

もちろん、首都直下地震や富士山噴火の懸念まで重心に影響を与える将来不安は残る。

それを回避するためにも、「マイホームは一生もの」という価値観を捨て、10年先を見据えて居住地を選ぶ戦略が重要になっていく。

山下 努 不動産ジャーナリスト

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やました つとむ

朝日新聞経済記者、朝日新聞不動産業務室員を経て、現在はフリーの経済ジャーナリスト・経済アナリスト。1986年朝日新聞社入社、大阪経済部、東京経済部、『ヘラルド朝日』、『朝日ウイークリー』、「朝日新聞オピニオン」、『AERA』編集部、不動産業務室などに在籍。2023年朝日新聞社退社。不動産業(ゼネコン、土地、住宅)については旧建設省記者クラブ、国土交通省記者クラブ、朝日新聞不動産業務室などで30年以上の取材・調査経験を誇る。不動産をはじめとする資本市場の分析と世代会計、文化財保護への造詣が深く、執筆した不動産関連の記事・調査レポートは1000本以上に及ぶ。

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