「低年収の若者」無視した少子化対策が意味ない訳 高年収帯しか子育て世帯が増えていない現実

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もちろん、両親が裕福でなくとも、自身が頑張って稼いだ若者の結婚意欲や子ども希望率は高いのですが、それは自分自身が稼いで「お金の問題」をクリアしたからです。

要するに、自分の力であろうとなかろうと、「お金の心配をしなくていい」状況にならないと、結婚というものに向き合える余裕が出てこないということで、結局「お金の問題」ということになるわけです。

若者が恋愛離れや結婚離れ、または子ども離れをしているわけではありません。そうした意欲や希望を得られないのは、「若者からお金が離れている(より正確に言えば、若者からお金が引き離されている)」という状況であって、彼らの心の中から「今後も経済的に苦しいだろう」という将来的不安が払拭できないからです。

「結婚・出産できる層」と「できない層」の二極化

政府は「賃上げ」ばかり言いますが、賃上げしたところで昨今の物価上昇に追いついていません。何より、賃上げできる大企業勤務の若者はいいかもしれませんが、就業者の7割を占める中小企業で同レベルの賃上げができる保証はありません。

恵まれた環境にある者はさらに恵まれ、そうでない者はさらに悪化していくという「K字経済(富裕層と貧困層の経済格差など経済の二極化が進む状態)」が加速し、それは同時に「結婚・出産できる層」と「できない層」の二極化になるとともに、中間層が消滅していくことになります。

すでに、「高年収帯しか子育て世帯が増えていない」という現実が作られつつあります。「賃上げ」でなくても、若者の実質可処分所得を増やす方法はあります。税金などは本来その調整機能を果たす役割があるはずですが、ここ最近の政府のやり方は「子育て支援金」など、逆に国民負担を増やし、全体の実質可処分所得を減らす方向になっており、これは少子化を促進する逆効果にしかなりません。そして、その被害を一番受けるのが中間層の若者なのです。

「少子化はお金の問題ではない」と簡単に片づけないほしい。「お金の問題」は「心の問題」です。何も食うのに困るほどの貧困を救えという話ではありませんが、人口ボリュームの多い中間層の若者が結婚にしろ出産にしろ、その意欲を喪失してしまったら、国全体の経済も未来も失われてしまうでしょう。

荒川 和久 独身研究家、コラムニスト

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あらかわ かずひさ / Kazuhisa Arakawa

ソロ社会および独身男女の行動や消費を研究する独身生活者研究の第一人者として、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・Webメディアなどに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』(小学館新書)、『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』(ぱる出版)、『「一人で生きる」が当たり前になる社会』(ディスカヴァー携書)(ディスカヴァー携書)、『結婚滅亡』(あさ出版)、『ソロエコノミーの襲来』(ワニブックスPLUS新書)、『超ソロ社会』(PHP新書)、がある。

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