精神科医も悩む「患者本人が望まない入院」の問題 必要であっても日常的な罪悪感を抱えている

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同じような感覚になるもの、というのを考えていくと、話題になっている医療ネタというものもあまり見たくない気がして、なるべく見ないようにしている。それは、Twitterにいる医師たちの間で話題になっているニュースとかもそうだし、コロナくらいの規模のものについてもそうである。コロナについては発信はもちろんしないし、受信も必要最低限にするようにしていた。

Twitterで医師に話題のニュースに至っては見たくなさすぎて、知り合い以外でタイムラインに流れてくる医者のアカウントの大半をミュートにしているくらいだ。

“感想の洪水”を無意識に避けている

考えてもみると、医療ドラマやドキュメンタリーも、内容そのものが嫌というよりも、放送と同時に流れてくる諸々の感想をみるのが嫌なのかもしれないと気がつく。医療ドラマや医療ドキュメンタリーを観ないのは、単にほかに観たいドラマをネットフリックスで観たり、サバイバルオーディション番組を観るのに忙しいからで、それだけであればあえて観ないという行動はとらない。私はあの感想の洪水を無意識には避けている。

なにか分からないけれども、医療コンテンツが医者なり一般人にあれこれ言われているとき、なぜか自分が批判を受けている感覚になる。何か、言い訳や弁明をしないといけない気がしてくるのだ。おそらくそれはTwitterでなにやら述べている医師なども同じで、弁明しないといけない感じがするから弁明しているのではないかと思うのである。

例えばドキュメンタリーで医療訴訟の問題をやっていたとすると、私自身は訴訟を受けたことはないけれども、訴訟の種のようなものは毎日毎秒そこいらじゅうに散らばっており、毎度なんとかかわしにかわして生きているわけで、一つ判断を、あるいは言葉を間違えば糾弾される側という感覚が常にある。だから、訴訟が取り上げられ、例えば担当医師の対応がまずかった、みたいな話で一般の人や医療者が槍玉にあげているのをみると、なにか自分が批難されているような気がして、心の健康に良くない。

つい先日は、精神科医療のドキュメンタリーがあったようで、ミュートしてもミュートしてもその話がタイムラインに流れてきた。定期的に話題になる強制医療の是非の話で、とくに話題になったのは強制医療の是非云々の話以上に、論外なレベルの扱いを患者さんに対してしていた病院の話らしい。

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