「セクシー田中さん」報告書に批判殺到の根本原因 日テレ、小学館の報告書で当事者の証言が相違

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

今回のふたつの報告書はどちらも第三者委員会の報告ではなく、両社の役員と依頼を受けた弁護士のチームが作成しています。双方のポジションで、何が起きたのかの証言が集められ、まとめられています。

『藪の中』は芥川龍之介の小説で、藪の中で起きた事件についての当事者それぞれの証言が食い違い、相矛盾する物語です。今回の報告書でも当事者の認識が食い違う箇所が多数見受けられます。

異なる証言を併記する際に弁護士は「なお」という言葉を多用します。この「なお」の出現回数は日テレの報告書で32カ所、小学館の報告書で29カ所ありますから、そのことだけからも双方の言い分が大きく違うことが理解できるかと思います。

ただし小説の『藪の中』とは違い、それぞれの立場で弁護士が委託を受けて調査された報告書を読み解くと、徐々に何が起きていたかがわかるように作られています。ふたつの報告書からわかる問題の構造を異なる3つの視点でまとめてみたいと思います。

先に申し上げておきますと、本記事は前後編の構成で、前編で語られる原作者の視点のストーリーは、後編の別のふたつの視点でのストーリーを通じて事件の様相を変えていきます。

①原作者の視点

小学館の調査報告書(写真:編集部)

小学館の報告書では担当編集者の証言から原作者の視点で何が起きていたのかが詳述されています。

日テレからドラマ化の依頼があり、小学館の編集者と日テレのプロデューサーが最初に顔合わせをしたのが2023年3月9日でした。その際、編集者は過去の映像化の経験から「原作者が自分の作品を大切にする方であり、作品の世界観を守るために細かな指示をする」ことを伝えています。

ちなみに漫画原作のドラマ化においては過去、『おせん』や『いいひと。』などの作品で「原作レイプ」と非難されるほどの大幅な改変が行われてきたことが問題視されています。

この後に起きる事態を見ると『セクシー田中さん』については原作の世界観を大事にするという認識は小学館、日テレ双方で共有されています。原作に沿ったストーリーでドラマ化が進む中、事態は細部のこだわりで発生します。

関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事