「うつ病で休職」回復に効果的な"心の休ませ方" 働けないことへの劣等感や罪悪感を遠ざける

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しかし、仕事は厳しいものです。ここまでできたら、次はここと、ギリギリのところまで会社は求めてきます。それに応えようと、本人も自分を追い込みます。そして、ついに応えられない仕事に出会うことになります。

その結果、パフォーマンスが落ちて評価が下がる。そうすると、自信をなくし、将来を悲観してしまいます。会社や周囲の手のひら返しの対応に、人を信じられなくなり、仕事を楽しめなくなります。

ほとんど毎日、1日中ゆううつになる「定型的うつ」

うつ病は、立派な生き方をされてきたから発症する病です。定型的うつ病は、ほとんどそれです。私のクリニックを訪れたAさんの場合もそうでした。

インターネットで検索して私のクリニックを知ったAさんは、診察室で私にこう訴えてきました。
「どうにもならなくなりました。考えがまとまらず、気力がありません。仕事ができません。会社の仲間と会うのが怖くなりました」
Aさんの症状を細かく聞いていくと、自信喪失、後悔、悲観、会社への強い怒り、焦燥感、情緒不安定、対人恐怖、倦怠感、不眠、食欲不振などがあり、これらは心と脳の蓄積疲労による症状と考えられました。
このような症状が1カ月以上続いていて、徐々に悪化していたのです。
当時42歳のAさんは、とても温和で人に好かれるタイプの会社員です。ご両親との2世帯で、奥様と小学生のお子様2人の6人家族。仕事では上昇志向が強く、課長職に昇進し、これからというときでした。
Aさんは、中間管理職としての未経験の業務が増え、仕事が行き詰まります。元来の心配性、完璧症、几帳面、温和な性格に加え、他の人と一緒に仕事をした経験が少なく、困難な仕事を全部一人で抱え込んでしまったのです。
さらに、新築のローンの心配、家族内の人間関係の悩みが加わった結果、心と脳に疲労をきたしていました。私の診断は、「定型的うつ病」です。

定型的うつ病を発症すると、ほとんど毎日、ほとんど1日中、ゆううつな気分が続きます。また、ほとんど毎日、ほとんど1日中、すべてのことに興味がなくなり、意欲もわかなくなります。

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