QE2は失敗だった、金融・財政政策限界で残る道はイノベーション--田中直毅・国際公共政策研究センター理事長《世界金融動乱》
--米国経済の失速や国債格下げなどでドルの信認が揺らいでいる。
昨年秋に米国が開始したQE2(第2次量的金融緩和)は、新興国経済のインフレ期待を高め、石油や穀物など一次産品高騰を招いた。国際経済に多大な影響を与える一方、米国のリアルエコノミー(実体経済)は失速している。
ドルの保有の過半が非米国の国々という状況下では、米国の金融政策は世界の信用創造やインフレ期待を刺激し、世界のリスク性資産の分布を歪めることをFRBは百も承知だった。
だがFRBは、グローバルに大きな影響を与える前に、米国の実体経済を持ち上げ、出口戦略に持って行くという唯一のソリューションに賭けた。
結果は、失敗だった。それがドルの信認という話につながっている。今後、QE3という話になるかもしれないが、ベン・バーナンキ(FRB議長)は、過剰な期待を打ち消すため、「金融政策は万能ではない」と言うだろう。
--米国は財政も弾薬が尽きたという状況になっている。
ムダな公共事業をやって財政が悪化するというのは日本特有の問題だったが、米国はGSE(政府支援法人)を通じ、日本の公共事業に相当することを住宅でやった。モーゲージや中古住宅の価格がなお低迷が続く中で、GSEの自己資本の毀損がどのくらいあるのか。
最終的には政府が自己資本の毀損を穴埋めすることになろうが、GSEの発行・保証する債券の残高がリーマンショック前の連邦政府の債務残高を上回っていたことを考えると、連邦政府の債務残高はさらに大きく膨らむことになる。