QE2は失敗だった、金融・財政政策限界で残る道はイノベーション--田中直毅・国際公共政策研究センター理事長《世界金融動乱》
米国の財政の余地は長期的に失われ、フィスカル・コンソリデーション(緊縮財政)は10年単位で続いていくと考えるべきだ。
それは当然、米国のエンゲージメント(関与政策)に影響を及ぼす。軍事産業基盤を中国、太平洋にターゲットを絞りながら、比較的少ない軍事費で緊縮財政を図っていくことになろう。
--世界的に金融政策も財政政策も限界が見えた状況下で、実体経済をどう支えていくか。
ケインジアンもマネタリストも傷ついた今、残るのはオーストリア学派だけだ。シュンペーターのイノベーション(革新)が1つ。これまでのビジネスモデルを覆すようなイノベーティブな手法でブレークスルーを図っていこうという流れが強くなっていくだろう。
その有力な分野の1つが、グリーン・インダストリーだろう。今後はいかにベンチマーク(基準)やタイムテーブル(工程表)を作って具体的な産業として育てていくかが問われる。
--日本では円高で産業界から悲鳴が上がっている。為替介入や追加金融緩和でしのいでいる状態だが、どう対応すべきか。
円高対応と地球温暖化対応とは、同じターミノロジーで今や語られている。地球温暖化対策の1つにアダプテーション(適応化)がある。氷山が解けると海の水位が上がる。これに対応して堤防を高くするといった対応だ。
本来はCO2排出量の削減が本質的な解とされているが、新興国での排出量増大もあり、実際は難しい。だから現実的にやっていける策を考える、それがアダプテーションだ。