同法人では、ダイバーシティやハンディキャップへの理解の向上を目的に、ウィズ・タイムのほかにも2つの体験型エンターテインメントを主催する。
1999年から開催している「ダイアログ・イン・ザ・ダーク(以下、イン・ザ・ダーク)」は、照度ゼロの真っ暗闇の中で視覚障害者のアテンドのもと、非日常体験をしながら、グループメンバーと対話をする。すでに、国内で24万人以上が体験した。
2017年から開催する「ダイアログ・イン・サイレンス」は、音を遮断するヘッドホンを装着しながら、聴覚障害者のアテンドのもと、音や声を出さずにコミュニケーションする方法を見つけ出す。
ドイツ生まれのエンターテインメント
これらのダイアログシリーズは、ドイツの哲学博士アンドレアス・ハイネッケが1988年に発案した。
ハイネッケの父親はドイツ人、母親はユダヤ人だったが、幼い頃、彼は両親ともドイツ人と聞かされていた。このため、13歳で母親がユダヤ人だと知ったとき、大きなショックを受けたという。
それ以来、ハイネッケは民族や文化が異なるだけで差別が起きることを考えるために、哲学を学んだ。そのとき、哲学者マルティン・ブーバーの著書『対話の哲学』から、「学ぶための唯一の方法は遭遇することである」という一節に出会った。
日本にダイアログシリーズを導入した志村真介さん(62歳)は、こう説明する。
「対話とは、対等な立場で話をすることです。私たちは区別したり、差別したり、整理したり、分類したりすることは得意ですが、対話のスキルは学んできていません。そんな社会で対話をするためには、強制的に対等になるシチュエーションに入ってみる必要があります」
感覚を制限された空間に入ると、「同じ時間に、同じ場所にいる相手に、興味や関心が向く」という。
志村さんは、「疑似体験からだけでは、私たちはかわいそうだから手伝うという発想になります。一方、対等な立場で対話を重ねることで、相手への関心が高まり、これまでの固定観念や既成概念が変わるきっかけを作ります」とも話す。
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